第1064号『映画「ラストマイル」を観た』

先ごろの米国大統領選挙では、民主党のハリス副大統領が敗れトランプが勝利を収めた。それも、ほぼ圧勝で。もう少し接戦になるのではとのマスコミ予想とはだいぶ違っていた。

それぞれの支持層や争点の違いは明確である。並べてみた。トランプは、白人中心・高卒・男・中西部の田舎・移民排除・中絶反対・ウクライナ援助反対・高関税。一方のハリスは、多人種・大卒・女・NYやLAなどの都会・移民受入・中絶の権利保持・ウクライナ援助支援・自由貿易支持。今回の勝利の背景には国民の多くが、インフレによる生活苦と激しい格差のなかで喘いでいるから。それはバイデン民主党の政策のせいだ。だから、こんどはトランプのアメリカ第一主義にすがるのだ。つづめれば、大卒でNYやLAに住んでITや金融関係で仕事をして、環境や人権に配慮している知ったかぶりの民主党支持のエリート層にうんざりしている。彼らの言う御託では飯が食えないのだと。

1つのデータがある。米国の総人口3億3500万人の7割強、つまり、2億5千万人米国民の所得額と超富豪5人の合計額が同じだという。その5人とは、投資家のバフェット、マイクロソフトのゲイツ、メタのザッカーバーグ、スペースX/ステラのマスクそしてアマゾンのベゾスだ。資本主義という仕組みの底が抜け、これから先はもう誰にも予想し得ない世界へと移行するのだろう。

週末、映画『ラストマイル』を観た。邦画として今年一番の興行収入を獲得しそうな勢いである。この日もほぼ満席だった。TVドラマ『アンナチュラル』『MIU404』の塚原あゆ子監督と野木亜紀子脚本という、いま最も力のあるヒットメーカーコンビによる作品だ。

あらすじは、巨大ECサイトが運営する物流センターから配送されたダンボール箱が、爆発するという事件が続発。流通業界最大のイベントであるブラックフライデーの時期を狙った事件でもあり、現場は混乱と恐怖の渦に巻き込まれる。この物流センターに着任したばかりの舟渡エレナ(満島ひかり)はチームマネージャー梨本孔(岡田将生)とともに事態の収拾に奔走するのだが・・・。

劇中での企業名は変えているが、舞台となった米国資本の巨大ECサイトとはジェフ・ベゾスのアマゾンだろう。(余談だが、TVではスポンサーの縛りがあるから絶対に成し得なかったドラマであろう)そこで働く人たち、多くの非正規社員やその周辺で動く宅配便の人たち、そして正規社員までもが何かに追い詰められ搾取されている。それは、時間なのか、富なのか、欲望なのか。劇中ではCustomer centric(全てはお客様のために)というワードが使われていた。目的はあらゆる手段を正当化する。

米国では、あからさまに富を貪る層と際限のない貧困層がむき出しになっている。そして日本では、あからさまな富の手先となっている層と隠れた貧困層とが綯い交ぜで放置されている。僕たちは誰のために、そしてなんのために労働しているのか。改めて考えてみたいと思った。

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