493号から、ファンが集まる場作りに成功した事例を紹介している。
今回紹介するのは、年間30万人来場するワイナリー『カーブドッチ』。
いまでは、1万人を超える会員も登録しているという。
このワイナリーは、前回、事例紹介した角田山妙光寺『安穏廟』から、わずか数分のところにある。
「フェステバル安穏」のイベントも無事終わり、スタッフの打ち上げパーティが用意されていた。
その会場となったのが、ワイナリーの中にある建家だった。
ブドウ畑を作り始めて、3、4年の頃で、今ほど整備されてはいなかったが、何となく素敵な場に成るのだろうなと、予感させるものがあった。
16年も前のことである。
そして、たまたま席が隣り合わせになったのが、『カーブドッチ』を創業した、落希一郎さんだった。
聞けば、ここが会場になった理由の1つに、実は、落さんも、終の場として『安穏廟』の購入したメンバーのお一人だった。
このワイナリーのオーナーとは思えない、落さんの風貌に少し驚いた。
しかし、日々、ブドウ畑の収穫からワイン製造まで、さらに園内の芝や、花の手入れまで、自ら作業してるとのこと。
その、がっしりとした躯体、太い眉、真っ黒に日焼けした顔、そして、満面の笑顔が、その事実を裏付けていた。
興味が沸き、あれこれと問うた。
落さんは、新潟の出身ですか?
「いや、出身は鹿児島だ。」
では、なぜこの新潟角田浜の地にワイナリーを作ろうと思ったのか?
「日本で理想のワイナリーを作ろうと、全国を歩きここにワイナリーを作ることに決めた。」
え!?。甲州とかじゃないんですか?
落さん曰く、「食べる品種のブドウなら甲州も良い。
でも、ワインにするための場としては、ここが最適だ。
なぜなら、全国で一番年間降雨量が少ないエリアの1つが、ここ、新潟の角田浜なんだ。」と。
ここからは、落さんの熱いワイン作りへの想いが、滔々と語られた。
そして、「カワムラさん、株主になって下さい。」と言われた。
僕は、キョトンとしてしまった。
「いやいや、株は株でも、ブドウの苗木を1本、買って貰えないか、」と。
つまり、こういうことだ。
1本、1万円でブドウの苗木を購入したメンバーに、10年間にわたり、翌年製造したワインを1本、無料で進呈するという制度である。
僕は、直ぐに同意し、メンバーになった。
そして、落さんの夢を応援したくなった。
翌年、カーブドッチから新酒のワインが出来ましたと、手紙が届いた。
そこには、ようやく収穫できたと喜びと、ワインをみんなで楽しんで欲しいという、落さんの熱いメッセージが添えられていた。
約束通り、1本は進呈される。
しかし、それでは僕の気持ちが収まらなくなっていた。
結局、同封されていたこの年のワインリストをながめながら、1本ではなく、数本注文した。
当然、僕の周りの人に、このストーリーを語らずにはいられなくなった。
人は、欲しいもののためにお金を使う。
でも、お金の使い方は、それだけではない。
人の夢を応援するために使う使い方もあることを、僕は学んだ。
なぜ、『カーブドッチ』が成功しているのかを備忘的にまとめたものが、当時のノートにメモしてあった。
いくつか列挙する。
『カーブドッチ』成功の秘密
・同じテーマ(ワイン好き)の集まりが新潟市を中心に、地方にも潜在的に存在していた。
・地方で、周辺にこれといった競合がいないから、おらが町の気の利いた場所として、このワイナリーに東京や県外からのお客を 連れてくる。
・苗木購入者が中心メンバー(ファン)となり、自分のこととして口コミすることができた。
・毎年の収穫と新酒のお知らせを通して、メンバーとのタッチポイントをリアルに、しかも継続的に作ることができた。
・ワイナリーの景観(ランドスケープデザインも含めて)が優れていた。
次回も、ファンを集めることに成功している場所をご紹介してみたい。
2件のフィードバック
突然のメッセージお許しください。
しばらくあなたのブログを拝見させていただいていたのですが
どうしても気になって気になって我慢が出来なくなったので
一言だけお許しください。
ファンとは無理して作るものではないと思います。
他人を分析してできるものではないような気がします。
自分がやっていることに賛同し勝手についてくるのがファンではないでしょうか?
フォレストガンプを覚えていますか?
走っているうちに気がついたらたくさんの人が後ろについてきた。
ファンとは狙って作るものではありませんよ。
お世話様です。
ファンサイトのカワムラです。
貴重な、ご意見ありがとうございます。
また、ご高覧にも感謝しております。
ここ3回書いている内容は、いずれも、なんらかの形で私自身が、ファン作りの取り組みにかかわって
きた事例です。後付けで成功したことをあれこれ言っているものではなく、当初、ほとんどファンが
いない状態から付き合ってきた案件ばかりです。
そして、これ以外にも、ファン作りに成功事例を見てきました。
そうした中で、やはり成功している事例には、共通する要素がいくつかあることにも気がつきました。
世の中に存在するものは、どんなものでも、必然性があるのではないでしょうか。
一生懸命がんばっている姿に人が共感するというのも、ファンが出来る要素の1つではないでしょうか。
狙ってあざといことをやれば、所詮、見抜かれてしまうのは当然とおもいます。
それでは、ファンがつくはずがないのも、また当然だとおもいます。
僕は、ファンを狙って作ることを奨励しているつもりはありません。
ただ、ファン作りに共通するものを理解した上で、出来るだけ誠意をもって取り組むことには、意義が
あるのではないと発言しているつもりです。
また、ご意見いただければ幸甚です。
よろしくお願いします。
ファンサイト有限会社 川村隆一