週末、映画『人生の特等席』を観た。
イーストウッドは役者として『グラン・トリノ』以来、4年ぶりのスクリーン登場。
本作で監督デビューを果たしたロバート・ロレンツは、イーストウッド自らが、唯一愛弟子として認めている人物である。
落ち着きのある抑えた演出方法は、師匠 イーストウッド譲りなのだろう。
主演で大リーグの老スカウトマンを演じるクリント・イーストウッド。
加齢とともに、目に問題を抱えた初老の男(ガス)の生き様を描いた物語であり、
瓦解した父と娘(ミッキー)との絆を再生する物語でもある。
加齢という言葉が、身近な私事として響いた。
昨年、定期検診をしたときのことである。
送られたきた検査結果に、「加齢性黄斑症」の疑いがあり、眼科で再検査をするようにとの但し書きが添えられていた。
この、映画でガスが疑われたのと同じ病。
精密検査を行ったが、特段症状があるわけでもなく、要経過検査ということで1年過ごした。
この病は、はじめ自覚症状がなく進行する。
しかし、年齢とともに、ある段階から目の中心部がかすむ、あるいは線が歪んで見えるなどの
支障が生じ治癒が難しい。
今年の定期検診では、症状に変化が見られないとのことで、引き続き要経過検査となった。
年老いていくことは、誰にもどんなことをしても、止めることはできない。
大団円で終わればと、誰もが思うが、そうはならないのが大方の人生。
しかも、日ごとに何かに追い立てられ、自らの肉体が崩れていく醜さと向かい合う日々。
では、どうやって「歳を重ねること」を体現すればいいのだろうか?
大声をだすわけでもない。
過剰な演技をするでもない。
イーストウッドの振る舞いから、学ぶべきことがあった。
その答えを、この映画で垣間みた。
・時代に合わせる必要なんかない。
・身勝手やればいい。
・若者を苦しめてやればいい。(笑)
・現実に向き合い、静かに戦い続けること。
原題がそれを示唆している。
『TROUBLE WITH THE CURVE』
まっすぐな人生なんて、面白くない。
「人生の特等席」は自らが決めることである、と。