例えば「こんど本を貸すね」、例えば「こんど飲みにいきましょう」と言われ、貸し
てくれたことも、飲んだためしもない。
うっかり失念したり、よしんば約束を果たさなくても、あまり困ることもないからと、
高をくくってしまう。
社交辞令とはいえ、気にしている方にしてみれば、なんとなく裏切られた気分になる。
意図せず、自らがそんな事態を招いてしまったこともある。
事程左様に小さな約束を守るのは難しい。
2006年春に上梓した『企業ファンサイト入門』(日刊工業新聞社刊)を執筆していた
時のこと。
普段なにげなく使っている、言葉たちに襲い掛かられた。
ファンとは?
定番とは?
ブランドとは?、等々。
ひとつひとつの言葉を自分なりに定義し、理解しないとその先へと展開できない。
こうして膠着した状態のなかで、何度も足踏みした。
そんな言葉の1つ、ブランドとは何か?
一言でいえば、「他者との約束」のことではないかと想い至った。
例えば、ルイ・ヴィトン。
その商材が高いからブランドなのではない。
基本的にどんな状態でも、修理してくれる。
そして、その時々の実勢価格での変動はあるものの、決してダンピングはしない。
こうしたことをお客様と約束し、守り続けている。
一方、製造過程でずさんな管理をしていた雪印乳業や、食材の使い回しを日常的に
していた大阪船場吉兆など、約束を違えたことでブランドが地に落ちた。
こうした事例はいくつもある。
ことは、商品やサービスだけにとどまらない。
いや、じつは最も重要なことがある。
それは、自分というブランドを形成しているのも、この「他者との約束」なのだ。
さて、明日にでも、飲みに行こうと誘った彼に連絡してみるか。