「みんなで渡れば怖くない。」
阪急阪神ホテルズに端を発した食材偽装表示行為、ここにきて、我も我もとばかりに、
全国のホテルが相次ぎ公表しはじめている。
ルネッサンスサッポロ(札幌市)では中華レストランで「大正海老」「芝海老」とし
たメニュー表示とは異なり、単価の安いバナメイ海老やホワイトタイガーを使用して
いたという。
また、浜松市のホテルコンコルド浜松でもカレーのメニューで静岡産食材の使用を表
示しながら、実際には使っていなかったこともあった。
この他にも、まだまだ横並びで公表する気配である。
当然のことであるが、こうした偽装表示は法律違反である。
阪急阪神ホテルズでは、事体を受けてメニュー表示を改めた。
その数例である。
・「手捏ね煮込みハンバーグ定食」だったものを「煮込みハンバーグ定食」に
・「津軽地鶏のマリネ胡麻風味」が「津軽鳥マリネ胡麻風味」に
・「鮮魚と六甲山ホテル自家菜園野菜の天婦羅」が「海の幸と季節の野菜の天婦羅」に
確かに、変更前のほうが美味そうに感じる。
では、なぜこうした偽装が生まれたのか?
その原因のひとつとして、無農薬野菜や地のものにこだわり、且つ安価で容易に美味し
い食べ物を口にしたいといった風潮、要求が強くなっている。
そう考えると、実は、私たち消費者にも責任の一旦はあったのではないか。
実際、いつでもあるレベルの食材を恒常的に仕入れるのは現実問題として至難である。
ボクが知る稀な事例の一つが、横浜戸部にあるお店「ど根性ホルモン」である。
オーナーシェフ椿氏は、地元の農家や食品メーカーと長い時間をかけて信頼関係を作り上げ
てきた。
だからこそ、地もの野菜や食材をベースにお料理を提供することが実現できている。
「ど根性ホルモン」の由来というのが店に掲げられている。
土(ど)・・・当店のお料理は地元横浜の新鮮な農畜産物、いわゆる風土に支えられています。
根(こん)・・・戸部にしっかりと根を張り日々心をこめてお客様をもてなします。
生(じょう)・・・そこから生まれる出会いを大切にし、横浜に「食」で恩返しをします。
美味しさを計ることは難しいし、本来、食を大きなビジネスすることも似合わない。
むしろ、地元であえて狭い店構えで、個々の食材にこだわることにこそ、価値があるのでは
ないか。
そのこだわりに、ファンが着く。
それにしても、食材偽装をした担当者は、なぜ嘘をついたのだろうか?
想像するに、きっと皆に好かれたいと思ったからに違いない。
しかし、誰にも好かれたいと思うものは、結局、誰からも好かれないという事実を、
今回またしても証明する結果となったのではないか。