第337号『カッコわるいい』

【映画レスラー】
【映画レスラー】

映画『レスラー』を観た。
2008年ベネチア国際映画祭金獅子賞をはじめ、すでに多くの受賞とノミネートを獲得している。

ダーレン・アロノフスキー監督作品、主演はミッキー・ローク。
当初、製作会社から要望された主演はニコラス・ケージだった。
監督はロークにこだわった。
結果、製作費の大幅削減。

主人公ランディ(ローク)は盛りを過ぎたプロレスラー。
絶頂期はとうに過ぎているが、いまもどさ回りの興行を続けている。
トレーラーハウスに住んでいるが、その家賃の支払にも事欠く始末。
一人娘には愛想を尽かされ、絶縁状態。
その上、長年にわたる体力増強剤の使用と不摂生がたたり、心臓発作を起こす。
一命を取り留めたものの、もはや、プロレスへの復帰は不可能だと医師に宣告される。
レスラーを諦め、スーパーでのアルバイトに専念するがある出来事から、本当の自分がいるべき場所はどこかを悟る。
そして、ランディはふたたびリングへと・・・。

ミッキー・ロークと主人公ランディが重なり合う。
80年代一躍スターの座に登り詰めたが、次第に人気も低迷し、91年にプロボクサーに転向。
92年6月、日本で行われた興行試合でダリル・ミラーと対戦。
1ラウンドKO勝ちをおさめたが、その時のパンチがあからさまに、ヤラセとおもわれる内容だった。
翌日のスポーツ新聞で、そのパンチを称して「猫パンチ」との見出しが躍った。
観衆の失笑を買ったロークには、もはやスターの輝きはなかった。
その後、映画界へのカムバックを目指すが、ボクシングでダメージをうけた顔と、その整形での失敗。
さらに、家庭内暴力による二度の離婚。
この時期のことをロークは「家、妻、キァリア、自尊心。
すべてをなくして暗闇の中に立っていた」と振り返える。

映画『レスラー』には、『イヤー・オブ・ザ・ドラゴン』や『ナインハーフ』の格好いいミッキー・ロークの姿など、どこにもない。
限りなく不器用で、みっともないけれど、一途な主人公ランディと重なるオトコがいた。
そして、格好悪いことを貫き通した先にこそ、本当の格好良さがあるのだと気付かされた。

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