映画「ココ・シャネル」を観た。
紛れもなく、ファッションブランドのひとつであるココ・シャネル。
しかし、ココの出現は単にブランドを生み出した女性ということに留まらないのではないかと思った。
窮屈なコルセットを嵌め、体形を覆い隠すようなファッショが当り前の時代に、労働者の服をヒントにしたゆったりとしたウエアや、本来、裏地で使用する安価なジャージを使ってデザインした服などを次々に生み出していった。
いまでは日常的に女性たちが纏っているジャージ素材のウエアであるが、当時、女性の位置や社会背景を考えれば、挑戦的で破天荒ともとれる代物である。
そして、そのウエアは多くの女性たちの支持を得た。
翻って考えてみると、ココが変えたものはファッションだけではない。
女性の有り様や価値をも変容したのだ。
自分のしたいことをもっと自由に行動すること。
つまり、ファッションを通して女性は自由を獲得することができるのだと宣言した。
体系や枠組みは変わらず、部分的な流行が移り変わる「モード」ではなく、これまでのスタイルや価値観そのもの、つまり「コード」を変えた人なのだ。
大きく潮流が変わった、19世紀から20世紀。
多くの分野でコードが変わった。
ココ・シャネルもまた、その変容の時に登場したのだ。
ココ・シャネルのことばを2つ、3つ。
「この私が引退する?今まで何ひとつ諦めたことのない私が?」
「人間は成功ではなく失敗で強くなるの。私は逆流を遡って強くなった」
「女は男のためでなく、自分たちのために装うべきだ」
いま多くの聡明な女性たちは、ココの野心を忠実に再現しているように思えた。