【柴又帝釈天参道】
今年も、柴又帝釈天にて初詣。
数えて、14回目。
毎年恒例にしてきたが、5年前の初詣の帰り、いかにも正月らしいことをしようと、
映画『男はつらいよ』シリーズをあらためて観た。
その、あまりの面白さに驚いた。
葛飾柴又は、その聖地だ。
寺も参道も頃合いがいい。
華美でもなく、大きすぎず、かと言って小さくもない。
人混みも正月の賑わいはあるが、身動きとれないほどではない。
参拝し、みくじを引き、お守りを新しいものに変える。
そして、これも恒例となった参道沿いにある店、「かなん亭」に立ち寄る。
店内は混み合ってはいるが相席で座り、数の子や煮込みと熱燗で、ゆっくりと一献
やる。
左右隣の席が近いこともあり、会話が聞くともなく聞こえてくる。
右に座っているカップルはどんな関係なんだろう?
夫婦?恋人?
左にいるグループは地元の仲間?
いずれにしても、さして重要な話しなどではない。
いや、むしろどうでもよい、取るに足らないことばかりなのだろう。
ふと、映画『男はつらいよ』のシーンが幾つか思い浮かんだ。
『男はつらいよ』48作全作品を観て、分かったことがある。
この映画は、もちろん寅次郎のロードムービーではあるが、一方で、妹さくらを通し
てみた、一所懸命に、そして誠実に生きる家族の物語でもあった。
左右に座る、誰彼なく、それぞれに重ねてみれば、ボクらのまわりに起こる事柄など、
さほど良くもなく、悪くもない。
ただ日々その様相を、変化させているだけだろう。
そんな中で、圧倒的多数の人たちは誠実に、そして懸命にいまを生きているのだ。
ボクは、もつ煮を口に頬張り、盃でちびりとやる。
なんともふくよかで、満ち足りた気分になった。