【光のリズム】
アトリエを中央区浜町から、横浜市金沢区に移して5年が過ぎた。
そして、習慣になったことが幾つかある。
その1つが、掃除をすること。
朝、ともかく一番最初にすることが仕事場の掃除。
ものの小一時間もあれば、終わってしまうほどのスペースである。
しかも、日を開けずに掃除をしているからか、特に汚れもない。
汚れてもいないのに、なぜ掃除をするのか?
最初のころは、少し面倒くさい気分もあったが、掃除が行き届いた仕事場で
働くほうが、そうでないより気持ちよいだろうという程度の理由ではじめた
ことだった。
ところが、いつの頃からか、不思議と掃除が楽しくなった。
その楽しさとは、例えば掃除をしていて、失くしたはずのボールペンや付箋
が、書類棚の隙間に挟まっていたのを発見したり、例えばトイレットペーパ
ーやティッシュペーパーをそろそろ補充しなければといった、瑣末な事柄に
目配りができているということに。
つまり、なんと言ったらいいのか、こうした取るに足らない小さなことをし
っかりと押さえていることが、ボクのなかで自信のようなものに変わった。
いまだに、ボク自身、経営者として未熟であり、あれもこれも足りないこと
は自覚している。
開き直るわけではないが、おおかたの人が日々、自信をもってやれているこ
となど、そうそうあるものではないと思う。
でも、自分たちの居場所を大切にし、そこでしっかりと踏みとどまることが
できれば、なにかが違ってくるはずだ。
繰り返し床を履き、テーブルを拭き、ガラスを磨いていることで誰よりも、
この場所を大切にしているという実感が湧いてくる。
長い時間によって培われたものは、それほどあっけなくは無くはならない。
掃除という小さな、そして取るに足らない反復の習慣は、ささやかだけれど
確実に自信につながっている。