【界隈】
以前に比べ、あまり外で飲まなくなった。
それでも、月に数度、幾つかお気に入りの酒場を巡り、その暖簾をくぐる。
僕は、ビジネスとして経営しているようなチェーン店や、流行りの店舗よりは、
生業(なりわい)として、個人や家族でやっているような小店が好きだ。
先日、久しぶりに贔屓にしている店に立ち寄ると、シャッターが降りていた。
嫌な予感がした。
張り紙を見ると、閉店の知らせが書かれていた。
最近続けて、好きな酒場が2つも廃業した。
後日、店をやめるに至った経緯を人づてに聞いた。
原因は、店主の高齢化。
そして、一緒に店を支えていたおかみさんも病気になり、加えて跡継ぎもいない
ことだと聞いた。
もう1つの店は、借りている店舗が建て替えで、立ち退かなければならなくなり、
借り換えるにも、保証金も家賃も高くなりすぎたということらしい。
偶然みつけた記事である。
東京商工リサーチは、2017年の飲食業の倒産件数が前年比19・2%増の762件だっ
たとする調査結果をまとめた。
14年以来、3年ぶりの750件超えとなった。
仕入れ価格の高騰や人手不足による人件費増加などコスト増のほか、景気実感の
乏しさを背景とした個人消費の鈍さが影響したとみられる。
17年の負債総額は23・7%増の416億6500万円と、2年連続の増加となった。
業種別では、日本料理、中華料理、フランス料理店などの専門料理店が13・4%
増の203件。
以下、食堂・レストランが同34・2%増の200件、居酒屋などの酒場・ビアホール
が35・2%増の115件となった。
原因別では、販売不振が同17・7%増の618件と、全体の81・1%を占めた。
日刊工業新聞(1月10日)
防災に強く、経済強者の街という金科玉条を纏って、街も新陳代謝している。
東京駅、日本橋周辺の変わり方は凄まじいし、渋谷、新宿、吉祥寺、武蔵小山、
下北沢も同様だ。
2020年の東京オリンピックに向かって、東京は至る所で様変わりするのだろう。
そして、開発と同時に、ゴールデン街、のんべい横丁、ハモニカ横丁もツルリと
きれいにお色直しして残るのかもしれない。
想像するに、そんな街と店が魅力的とはどうしても思えないのだが。
もはや、ないものねだりかもしれない。
例えば、口数のすくないオヤジが作るつまみと、気の利くおかみさんがいて頃合
いのいい燗酒を用意してくれ、いつもの常連さんが、まるで自分の店のように、
甲斐甲斐しく手伝う、そんな酒場が残って欲しい。