【毎日新聞】
新聞購読を再開して、2ヶ月になる。
予想以上に面白い。
忙しさが続くと読みきれないし、物理的に紙としても
溜まる。
数年前、新聞の定期購買を止めた理由である。
そして時事的な情報を、ネットやTVで済ませてきた。
それはそれで、不便はなかった。
ところが、ちかごろ物足りなさを感じることが多くな
った。
原因が何なのか、特定は出来ていなのだが、ともあれ
ネットニュースやTVの情報の薄さというのか、ほぼ同
じ内容の繰り返しに食傷気味だった。
そんな時期に、郵便ポストに新聞お試し購読のはがき
が入っていた。
翌日、必要な項目に記入し、投函した。
程なくして新聞が届いた。
しかも一週間、毎日毎日。
届ける人の、温度を感じた。
そして、なんだか健気だなと思った。
新聞の面白さは、なんといっても一覧できるところだ
と思う。
バッサと開いて、紙面にレイアウトされた文字が飛び
込んでくる。
大きな事件は、大きな文字で。
紙面の前後左右に配置されている記事にも、それぞれ
に関連性を読み取れるように工夫がある。
相変わらず、忙しくなるとなかなか紙面を開くことさ
えままならないが、そんな時は、好きなコラムだけで
もざっと目を通す。
僕の好きなコラムは、読者から投稿された川柳を、コ
ピーライターの仲畑貴志氏が、毎日選んで掲載する「
仲畑流万能川柳」と、作家の高橋源一郎氏がこれまた
読者からの投稿相談に答える「人生相談」である。
先日の「人生相談」である。
高橋氏の答えが、あまりに秀逸だったので切り取って
ファイルした。
かい摘んで、記す。
相談は27歳の女性からのもの。
「長年の不仲と、泥酔すると母親に暴力をふるう父。
酒から覚めると、そのことをほとんど覚えていない。
それが原因で、両親は離婚した。
強い嫌悪感を覚えるが、年老いた父に親孝行もしたい。
でも、許せない。
どうすればいいでしょうか。」
この質問に、高橋氏は以下のように答える。
「娘として父を案ずる、あなたのお気持ちは素敵です。
けれど、家庭を壊したのは、父親の責任です。
その責任はとらなければなりませんね。
誰もが、自分の人生の責任を、です。
あなたは、なによりも、あなた自身の人生に向かい合
えばいいのだと思います。
あなたの父親が、ひとりの人間としてこれからどう生
きてゆくのか、静かに見守ってあげてください。
それで十分です。
いえ、そうすべきなのだと思います。」
誰もが、自分自身の人生の責任をとること。
人生とは何かを、これほど明快に指し示され驚いた。
そして、朝から清々しい気分になった。
これも、新聞の効用のひとつだ。