【大迫仕様ナイキブランド】
「ファンサイト」を構築していく過程で、気がつ
いたことがある。
「ファンサイト」を運用するということは、顧客
との関係を築くというだけではなく、結果として
企業(商品やサービスの)ブランドについても考
えざるを得なくなるということだ。
今回と次回の2回にわたり、考えてみたい。
ブランドとは、端的に言えば他者に対する約束ご
とである。
個人であれ、組織であれ、自分たちが約束したこ
とをいかに実行し、それを守り続けるかが問われ
る。
しかしながら、約束を守れず、無残にも崩壊した
事例を、これまで幾度となく目の当たりにしてき
た。
例えば、トラックのハブに欠陥があり、タイヤが
外れ大きな事故を引き起こした自動車会社も、期
限切れの牛乳を使い、食中毒を引き起こした会社
も、食材の使い回しがバレた高級料亭も、顧客と
の約束を反故にした。
だから、ブランドそのものが立ち行かなくなった
のだ。
2006年から2011年3月まで、浜町に仕事
場があった。
最寄りの駅は、都営新宿線浜町と都営浅草線・日
比谷線人形町か半蔵門線水天宮前。
人形町・浜町周辺は江戸時代から続く下町である。
そして、この界隈には老舗や隠れた名店がことの
ほか多い。
打ち合わせの帰り道、人形町駅で降り、地下から
地上にあがると交差点の近くに洋食の「キラク」
がある。
歩道を進むと焼き鳥屋の「鳥近」があり、親子丼
の「玉ひで」を右手に見ながら甘酒横丁の通りに
入る。
通りの1本目の路地にはすき焼きの「今半」の看
板が見える。
さらに横丁を往くと鯛焼きの「柳屋」、そのはす
向かいに三味線の「ばち英」、そして角に居酒屋
の「笹新」がある。
さらに進み、清澄通りを渡り、明治座を左手に見
ながら、正面の浜町公園を廻り込むようにして、
公園と平行しながら進むと、和装小物の「高虎」
がある。
ここを抜け、新大橋のたもとにあった事務所にた
どり着く。
こうして、居並ぶ名店をチラリチラリと覗きなが
らの帰路だった。
ある日、これらのお店に共通するものがあること
に気が付いた。
それは、どこも思いのほか間口が狭いということ
だ。
例えば「柳屋」の店頭では、鯛焼きを焼く職人が
汗をかきながら、せっせっと焼いている。
しかし、どんなに頑張っても作れる量はたかが知
れている。
したがって、食べたければ狭く細い店内から歩道
にはみ出すように列に並ぶしか方法がない。
さらに、6時を過ぎて「笹新」のカウンターに座
れたとすれば、その人は幸運というほかない。
なにしろ、5時開店にはすでに席が埋まるほどの
賑わいだ。
さらに、急いでいる時は「鳥近」のある歩道側は
歩かないほうがいい。
居並ぶ人混みに、必ずや行く手を塞がれるからだ。
こんな魅力ある店々が、なぜ間口を広げないのか?
857号へつづく。