【クルーズ船】
いま、世界が新型コロナウイルス感染症(COVID
-19)拡大のなかで、揺れ動いている。
こうした、最中にあって「ブランドとは何か?」
について語ることは、ことの本質について考察す
る上で、緊張感をもって向き合えるテーマでもあ
ると感じている。
さて、856号・857号とブランドについて書いてき
た。
そして、今回はブランドについての、一先ずのま
とめである。
「ブランドとは何か?」の問に対し、その答えを
導き出す方法として、逆説的な設定を提示してみ
たい。
つまり、「ブランドはいかにして瓦解するのか?」
と。
経営者が利益にこだわるのは、しごく当然のこと
である。
毎年の決算での評価は、極めて明快である。
その結果が、すべてでもある。
したがって、昨年よりも良い数字を求める。
しかし、必ずしも毎年右肩上がりとはいかない。
では、結果が悪い時にどうするか。
経営者はきれいごとではやっていけない。
その尻拭いとして、従業員の処遇を切り下げる。
あるいは、品質を落とす。
時に、帳簿の改ざんまで手を染める。
結果、お客様との約束を反故にする。
こうして多くのブランドは、崩壊していく。
これは規模の大小の問題ではない。
自分たちの、振る舞いと身の丈の有り様に対する
矜持のあるか、なしか。
現状を見れば、いまだに多くの企業は、すべから
く拡大再生産という欲望の拡張に加担することを
正解としている。
欲望は、本質的に模倣から始まり連鎖する。
誰かが食べているから、自分も食べたくなる。
他人が貰っているから、自分も貰いたくなる。
隣の会社が拡張したから、張り合って大きくする。
1つの欲望を手に入れたとたん、新たな欲望の渇
望が疼く。
もともと欲望は他者の模倣であるから際限もなく、
そして満たされることもない。
だから到底、欲望では自分の心を満たすことなど
できない。
”子曰く、由や、女(なんじ)に之を知るをおしえ
んか。之を知るをば之を知ると為し、知らざるを
知らずと為す。これ知るなり。”『論語』
知性ある人とは、何かを知っていると吹聴する人
ではなく、何が知らないのか知り、そのことに謙
虚になれる人のことである。
いま、僕たちの国のかたちを考えれば、少子高齢
社会へと突き進んでいるなかで、いまだに拡大・
成長の神話(*トリクルダウンにより富が分配さ
れ、経済成長がすべての問題を解決する)にとら
われている。
こうした、私利の追求という考え方が肯定される
ことで、資本主義が機能してきたことも、承知し
ている。
しかし、いまもって(2020年の今日)経済的、
資源的に持続可能な拡大と成長の一本道を歩き続
けることが出来るのか。
この点については、次号のテーマ(人口減少と持
続可能性について)として考えてみたい。
いまこそ、表層の富に流されることなく、ファン
(約束を守るべき相手とは誰なのかを考え)とじ
っくりと向き合い、対話することこそ、自分たち
のブランドを守ることができる最良の方法ではな
いか。
*トリクルダウン
https://ja.wikipedia.org/wiki/トリクルダウン理論
859号へつづく。