第859号『本を書く-9』

【ブレードランナー2049】

さて、なぞなぞである。

・1000・5・190・600・33・190
・370・60

この数字は何か?

答えは、
・セブンイレブン:1000店鋪閉店
・そごう西武 :5店鋪閉店
・プレナス(やよい軒) :190店鋪閉店
・オンワード :600店閉店
・イトーヨーカドー:33店閉店
・ほっともっと:190店閉店
・デニーズ:370店閉店
・ヤマダ電機:60店閉店

全国でチェーン展開している店舗を、今後数年で
閉鎖するという。
いずれも、昨年、新聞紙上で発表されたものであ
る。
なぜ閉店するのか。
一番の要因は人口の減少であろう。
しかも、地方での減少の度合いが急激に変化して
いるのだ。

最近、自社製品を直営店やフランチャイズ店で展
開している大手製造メーカーの担当者から伺った
話である。
「ここ10年ほどで来店客数が10%減少し、そ
の内訳をみると新規顧客が30%も減り、逆に既
存客からの売上が15%増えている」という。
新規顧客の減少と既存客の増大という傾向は、現
状どの業態でも似たような傾向ではないか。

この傾向を端的に指摘していたのが、『デフレの
正体』藻谷浩介著である。
このなかで、ものが売れないのは景気が悪いから
ではなく、働き盛りの人の数、「生産年齢人口」
が戦後急激に拡大し、それが減少に転じたことで
ものが売れなくなったと看破している。
2010年8月発刊である。
いまから、10年も前に書かれたものであるが、
いままさしくこの理路に、説得させられる。

生産年齢人口減少を、さらに実証するかのように
、ベストセラーとなった『未来の年表』河合雅司
著、そしてそれに続く『未来の地図帳』でもあき
らかなように、日本のいま目の前にある問題は、
少子化と高齢社会であることは、もはや誰もが否
定できない「常識」となった。

具体的に言えば、日本の人口は2019年1億2
390万人が2048年には1億人を割って99
13万人となる。
(国立社会保障・人口問題研究所調べ)

つまり、30年後2477万人のお客様がいなく
なるということだ。
これはオーストラリアの総人口2499万人に相
当する。
(出典:Demographic Yearbook2018 Webデータ)

ことほど左様に状況は大きく変わっているにもか
かわらず、日本国政府(アベノミクスで謳われて
いる「GDP600兆円達成」が目標)も、 多くの
企業(量的拡大を基本とした経営)も、いわば限
りない成長と拡大の一本道を、ただひたすらに歩
んでいる。
更に加えて、*レイ・カーツワイルが唱える**シ
ンギュラリティ(技術特異点)という、次なる成
長と拡大支援思考とでもいうべきシナリオも喧伝
されている。

この思考は、遺伝子工学とナノテクノロジーとロ
ボット工学による永遠の欲望存在証明を提示する
ということである。

例えれば、映画***『ブレードランナー2049』
ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作品(前作『ブレード
ランナー』に見劣りすることのない素晴らしい作
品だったが)におけるKとジョイ(人工知能の彼女
)との営みが理想だとするなら、僕は遠慮したい。

そもそも拡大成長路線が、本当に幸せになるため
の問題解決に繋がるのか?

次号で、さらに考えてみたい。

*レイ・カーツワイル

レイ・カーツワイルとは|人物像・研究・予測・シンギュラリティ論・現在

**シンギュラリティ(技術特異点)
https://ja.wikipedia.org/wiki/技術的特異点

***『ブレードランナー2049』
https://movies.yahoo.co.jp/movie/359122/story/

860号へつづく。