会社案内の刷新を図るべく3ヶ月間も準備し、打ち合わせを重ねているプロジェクトに参加している。
その業界では歴史も実績も備わった中堅企業である。
新しい企業イメージを盛り込んだものにしようとの狙いである。
皆、真剣に対応している。
しかし、いっこうに議論が進まない。
保守的な人たちが浮上した。
決して私腹を肥やす人たちではないが、もともとの状態にしがみつく人たちである。
どんなかたちであれ反対するという態度である。
そして、再度のプレゼンテーションを求められた。
どうやら、人間は変革に対してはおのずと抵抗するように出来ているものらしい。
そして自分たちの業界の特殊性がそうさせているという。
これまでいくどか専門という蛸壺の中の論理構築が、いつの間にか現実から遊離し、自閉的な仲間内でのみ意味ある遊戯に変容する事実を経験した。
こうして、変革に向かうはずの議論が堂々巡りとなり、むしろ後退しているようにも思えた。
問題が起こる時は不思議なくらい続くし山積もする。
打ち合わせも遅くなり、外食が多くなり酒量も増える。
返信しなければならないメールが並び、提出期限の迫る見積りや精算伝票の整理などに追われ、泳ぐことも走ることもままならず、体内に脂肪を蓄積する日々が続いた。
やらなければいけないことを紙に書く。
未処理項目が並ぶ。
一刻も早くPCを立ち上げ、それを順番にこなしていかなければ・・・。
しかし、渇望感と切迫感は収まらない。
日増しに問題の糸は絡まり複雑化していく。
夜が遅ければ、朝の起床も遅くなる。
いつもより小一時間早く起きてみた。
顔を洗う。
水を飲む。
ジャージに着替え、ランニングシューズを履く。
玄関の扉を開けると少し肌寒い。
身体の隅々まで清々しい朝の空気と臭いで満たされる。
ゆっくりと走る。
見慣れた街の風景も今朝はすこし違って見える。
忘れていたのはこの感覚である。
身動きのとれない状態をなんとかしようとあれこれ考え、なにが正しいのかを模索した。
しかし、なにをすべきかと大上段に構えた正論より身体を動かすことでその絡まった糸がすこし解けたように感じた。
他人と過去は変えられないが、自分と未来は変えられる。
自分にできる小さなことをきちんとして、待つ。
明日はきっといいプレゼンテーションができそうだ。