キリン・シーグラム社のウイスキーを愛してくれるお客様は確実にいる。
大きな広告予算をかけずにそれを実現するためにはどうすればいいのか。
そして「ボストンクラブ」を愛してくれるお客様と、新規のお客様に喜んでいただけるためには、どんな方法があるのだろうか。
たどりついたのが、webサイトによる密度の高い、長期的な関係づくりだった。
さらに、浅野氏は「いまウイスキーのヘビーユーザーはそのほとんどが男性でしかも高齢化している。
できれば30代前後の若い層や女性をも開拓したい」と考えていた。
どんなサイトがこれらの難問を解決しうるのか。
北河氏、野村氏との沈黙が続いた。
ビルから外に出ると冬空に星がまたたき、寒さが身にしみた。
明けて、2001年1月11日、かくしてプレゼンテーションの日がおとずれた。
北河氏、野村氏との幾度にもわたる打ち合わせで、いくつかのコンテンツ案と大まかなサイトのフレームを決めた。
サイトのフレームは、誰でも訪問できるエリアと、メンバーになった会員のみが参加できる2つのエリアを用意するというものである。
誰でも訪問できるエリアにはウイスキーに合う、つまみレシピのコーナーや、音楽を楽しむコーナーがある。
また、メンバーになると会員同士が情報交換できるBBS(電子掲示板)やその他お得情報も覗ける。
そして、これらの情報提供の案内人として、登場させたのが前述のミナミさんである。
このミナミさんの登場には、事前に1つの実験があった。
2000年に参加した「東京海上あんしん生命(現/東京海上日動あんしん生命)」のポータルサイトのプランがそれである。
プランを立てるにあたり、競合他社の生命保険会社のサイトを分析してみた。
生保関係のサイトには、何問かの質問に答えると自分に適した保険がわかるという、シュミレーションゲーム仕立てのものが数多くあった。
しかし、幾つもの問いに数字を記入したり、書き込みをしなければならない。
どうにもそれが煩わしく思えた。
もっと簡単に、一発で自分に近い保険が選べないのか。
いわゆるインターフェイスの使い心地が悪いのだ。
そうして、思いついたのが自分に近い人物像をトップページに置き、その像(アイコン)を押すと、選べばれた人物のプロフィールがわかるというものである。
例えば、52歳/経営者/大学生の息子と高校生の娘あり。
とか、32歳/主婦/最近結婚したばかり/2~3年の間に出産を予定している。
などなど。
それぞれの人物像を細かく規定し、その像に合わせ適合する保険が表示される。
こうした表示の仕方を、「ペルソナ案内人(その人物の仮面のような像という意味で)」と名付けた。
これは、ごくごく初期の考え方で稚拙なものではあったが、これまでの選択のさせ方からすれば、利用者にとっては随分とわかりやすいもになったとの評価をいただいた。
どうやら、webサイトのなかにも、ある人称性をもった人物が登場することで、参加者に安心感と親和感を提供することが出来るということが経験的にわかった。
かくしてボストンクラブを飲んで、極楽気分で覗いて見るサイト=「極楽クラブ」にも案内役のようなキャラクターを登場させてみたらどうだろうと提案した。
どんなキャラクターがいいのか。
さんざん考えたがなかなか思いつかない。
そこで、そのキャラクターをもっと具体的に、どんな人物像かと思いめぐらしてみた。
こよなくウイスキーを愛し、毎夜ちびりちびりと飲んでいるこの人は・・・と。
次号161号につづく。