第48号『「逃げる」こと』

最近、仕事の関係もあって立て続けに女性にお会いしています。
だいたい年齢的には40代前後の女性達です。
この辺、しっかり年齢を確認したわけではないので、多少、誤りはあろうかと思います。
専門分野は皆さん、俳人、獣医志望、通訳、学芸員、職人など異なるのですが、共通項は、いずれも輝いている女性達ばかりでした。
とりわけ目を見張るのは、グローバルな彼女らの活動です。
しかもスタートが皆、素人だった、フツーの女性だったことです。

こうしたフツー人が、研鑽を積んで世界に通用する能力を持ち、自ら選んだ分野を地道に開拓しつつ、同時に分野を超えた領域に意欲を燃やして、自然体でそれを実現しているのも驚きでした。
男なら恐らくこうはいかないでしょう。
ある女性に、その理由を聞いてみたら、「京都生まれの京都育ち。京都の風土は住む人にはきびしくつらい。
一生この環境で暮らすのかと思ったらいたたまれなくなった。
そこでとにかく脱出しようと思った」と応えてくれました。

なんとも意外な答えでしたが、でも「逃げる」という一見負け犬的な考えが、反対にエネルギーになることもあるのだ、と目から鱗の感じもしました。

最近、少女の殺人など痛ましい事件が頻繁しています。
専門家がいろいろなことをしゃべりまくっていますが、的を得ない、戯言?に近い発言ばかりです。
こうした背景には、おそらく「勝つことにしか価値を見出さない」社会そのものが見え隠れしませんか?
もっと自身を弱者の身において、積極的に「逃げる」ことがあってもよいというアドバイスもあるのではないか、と思います。
昔から負けてトクするという格言?もありますよね。

消費の分野を考えてもいままでは「勝つ」人生をシンボライズしてきたような気がします。
いまの消費トレンドも、あまり作り込まないファッションやB級グルメ、骨董ブームなど「逃げる」分野を意識する領域も出てきたようです。
いささかこじつけめいていますがいずれにしろ「逃げにくい」社会を、しなやかにいきる装置としての消費が必要とされる時代が到来しているのかも知れません。

そろそろ脱「勝者のためのマーケティング」を考えるのもいい時期なのかもしれません。

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