最近の情報技術の進化によりマーケティングの費用対効果を測定することは、さして困難ではなくなりました。
そして、こうした測定調査への追い風としては、説明責任の高まりもあるようです。
客観的に見るとこうした調査の盛り上がりは多いに歓迎されるべきことと思うのですが、実はマーケティングやコミュニケーション担当者のおよそ8割はこうした調査に対し不満を抱き、この調査結果を利用する人は、2割以下だとか意外に不評。
その理由は、こうした調査が、多くの販促活動は利益に貢献しておらず、また広告宣伝のROIは4%未満に過ぎないこと、しかも結果は悪化の一途を辿っていることを示していることに原因があることです。
有り体に言えば、彼らの不満の原因は、どうも、調査により突きつけられた結果が、彼らの思い描いた通りではなく、不愉快なものであったからと思われるとか、これはアメリカでのお話です。(HBR06)・3月号)
話は変わりますが、先般、ある老舗企業の方とお話する機会を得ました。
用件は別にあったのですが、企業の主張と市場原理との整合性というお話で思わぬ時間を割いてしまいました。
企業のこだわりが収益に結びついていないとかで、こうした現実を見据え、いま企業の原点を掘り下げ企業文化の腑分けに取り組んでいるとのお話でした。
大きな組織だけに色々な立場からの意見が活性化に向けて異見が飛び交っていることでしょう。
この企業はついこの前まで、マーケティングの最先端にあって消費文化をリードしてきていたのです。
それだけに誇り高く、外部の声はなかなか届かない風土のような印象を持ちました。
またエスタブリッシュな権威ではないと発言も控えねばならない気もします。
サービスビジネスの鉄則としてお客さまの欠点を指摘したり、議論をすることは差し控えるべきだと言う教訓があります。
そして事実その通りであることも多く経験しました。
景気がいまひとつぱっとせず、仕事をひとつ確保するのにもコンペ、コンペの繰り返し状況にある広告会社では、市場を見据えた正攻法よりはキーメンの顔色を伺う提案に傾斜しがちです。
しかし、マーケティングに関しては、議論は不可避です。ポジショニングを意識しない横並びの戦略や社内の事情優先のコミュニケーション施策は、本来軌道修正されるべきものであり、仮に調査が指し示すものがあれば大きな拠り所となり得るからです。
時代の変化の変化は待ったなしです。
明快なポジショニング、際だった差別化、市場への迎合を超えたマーケティングの実践にはサブカルチュアに目を向け、非本流の声に耳を澄ますことも必要でしょう。
それは不愉快を受容することかも知れません。
伝統あるこの企業に期待したいところです。