第124回『柔らか頭でお客様主義へ』

CS,個客、ワン・トゥ・ワン、CRMなど時代々で、お客様を起点におく経営はいろいろ言われてきていました。
しかし最近は、このお客様主義の経営も利益のプレシャーを背景にか、効率化と株主価値を追求するあまり、お客様不在の経営が目につきます。
保険金の未払い、賃金の未払い、賞味期限の虚偽、偽ブランド、リコール隠しなどなど
お女郎さんの眞のように、企業のお約束も口先だけとなりました。

例に挙げたのはいずれも不祥事ばかりで、このようなことは起こらないのが当たり前で
なんとも言う気もなくなる事件ですが、それ以上に懸念するのは、利益や効率を求めるが故に、お客様のニーズについてもかなり鈍感になっている企業が多いのではないか?と言うことです。それはとりわけサービスの面で強く感じます。

身近な話で恐縮ですが、最近、私の甥が、やっと伴侶となる女性と出会い挙式しました。
甥は40歳近く、そして花嫁も決して若くはありません。こうした大人同士の結婚式と言うことで自身のアッピールよりは、招待客のもてなしに比重を置いた、いわば花よりも実をとった挙式で、参列者は多いに満足したようです。

この式場は、近場の所為もあって私は時折ロビーで時間をつぶす所でもあり、結果、多くの花嫁を目にするのですが、個人的な印象では大人同士のカップルが以前よりも多くなっているような気がします。
事実、有名式場では花嫁が30歳代か、それ以上の挙式が大勢を占めているとのことです。
 
こうした結果、いまや人気を博しているのが、料理と会場、食卓の演出を中心にしたパッケージプランだそうです。また、商談の際しても両親抜きで来館し、クールな、かつてに比べれば「醒めた」カップルが殆どだそうです。
 
以上は、結婚というイベントに表出された現象ですが、ここで考えねばならないのは、派手、地味とか、エコノミーとか言うことではなく・大きく結婚観が変わったこと、また・労働スタイル、とりわけ女性のそれが一変したことで、こうした変化を捉えるには、新たなキーワードが必要とされると言うことです。
 
前者に関しては、離婚がめずらしくない時代となり、結婚が人生の中で大きなイベントでは無くなりつつあること。後者に関しては、生活を維持するためには共働きが前提となったこと、またキャリア志向の女性が増え、結婚式のイベントに夢を描く暇も時間もなくなったということです。また花嫁は自身の社会的な立場をも考慮せざるを得ません。
したがって結婚と儀式について言えば、「社会的にみっともなく」、出来れば「かっこよく」、「効率的」に挙げたいと言うのがトレンドとなってきたと言えます。つまりはお客様のニーズの大きな変化です。
 
したがってサービスを売る側は、従来の発想を切り替え、新たな視点からお客様の変化を先取りした「満足」を提供しなければならないでしょう。
こうしたことはウエディングに限りません。
 
外食、物販に関しても、「安い」「お得」は、一律ではありません。忙しい働き盛り世代では、多少、高くても時間が掛からないサービスを選ぶでしょうし、また、時間のクオリティを求めるお客様のサービスは、ファーストサービスは不愉快でしょう。酒のシーンでもミクソロジストいう新しい感覚のバーテンダーが現れサプライズのあるカクテルを提供し人気を博しています。まさに世間様ではお客様の価値が多様かつ細分化されてきているのですが、この変化に対応するにはかなりの想像力が必要とされるようです。
 
しかし、会社志向の経営風土にあってイマジネーションの不足する企業には見えない事柄でもありましょう。そんなわけでここのところは ま、儲けをちょっと忘れて柔らか頭となって、お客様がよろこぶことを考えてみませんか?と思う次第。
商売はそんなに甘くはないと言うお叱りを受けそうですが・・・。

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