第140回『プロシューマーとの共創』

 前回に引き続きプロシューマーを話題にしたいと思います。
プロシューマーなんて日本人にはいないし、居たとしても少数派じゃないの?大勢は企業の考え方に素直に従うのが日本の消費者では?昔を知る人は、そう考える向きも多いかも知れません。

 そのようにお考えの方は、いまの若者達を見てください。ケイタイやi-PODに代表される情報機器はむろん、ファッション、食事などにいたるほとんどの生活の要素は、彼らに合うようにカスタマイズしています。
また次世代を担う子供達ですらメールに写真やイラストを取り込み自分なりに再構築はお茶の子さいさい、でまさにちびっこプロシューマーたちが跋扈しています。

 こうした変化を一時的な現象と見るか、本質的な変化と見るかはカラスの勝手、自由ですが、しかし、ささいの変化を無視することで舞台から去っていった多くのビジネスもあることは事実です。
 
 一例ですが、いま情報機器市場の戦略はデザインを製品に付加することで優位を創っていこうとする流れがあります。そのために売れっ子デザイナーを製造過程に参加させることが見られるようになりました。デザイナーの感性や世界観が注目されることは悪いことではありません。多いに歓迎するところです。しかし、それはどのような経験価値を提案していこうとしているのか?という視点で考えると、現状ではどうもよく見えてこないような気がします。辛口に言えばかつての缶ビールのパッケージデザイン競争のように僅かな差異づくりのための小手先のしのぎに過ぎないとも言いたくなります。
 
 たしかに未知の経験価値を提案すると言うことは、かんたんではないでしょう。
しかし、カスタマイズを求める人々のほんとうの欲求を探り当てあらたな経験価値を提案することを諦めれば、ビジネスは衰退の途を辿る以外ありません。
 
 こうしたリスクを防ぐためにはビジネスはプロシューマーとのコラボレーションが必要ではないでしょうか?
 
 まずは・固有の経営資源やバリューチェーンからの発想をゼロにすること、そして・固定概念、従来の常識を棄てること。さらに・顧客を消費者と見るのではなく生活のプロとして評価して敬意をもって接すること、そしてお互いの異見が交流出来るプラットフォームを創り、作り手、使用者がいっしょになって、そこで得た課題を解決していくことにベストを尽くすシーンを創出していくことでしょう。

 こうした生産側・消費側との共創手続きは、もちろん私のアイディアではありません。かのスティーブ・ジョブスが、MACを発表した20年前にアップルをリードした考えです。
この考えが、i-POD、i-Phoneの成功など今日に見るアップル社復活のエンジンともなっているわけですから、一考に値するのではと、お節介ながら思うのです。

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