第13回 強さの条件

ダイヤモンドヘッド
ダイヤモンドヘッド

偶然のキッカケで仕事をサポートすることとなった会社の社員旅行。
そこに帯同することとなり、濃密な数日間を過ごしてきました。

「ぜひお越しください。思いっきり楽しんでください。」
従業員でも役員でもないのにご招待いただき、完全にお言葉に甘えた数日間だったのです。
経営者の懐の深さに感服したのは勿論のこと、スタッフの方々と会話し、
見えない絆で結ばれた組織の力を肌で感じ、あらためて「事業は人なり」を実感するのでした。

あまり詳しくは語れませんが、来期で10期目をむかえるこの会社は、
いわゆる営業会社で主としてWEB広告を販売代理しており、
現在では欧州進出を含め、将来を見据えた世界的な市場に目をむける経営をしております。

文字通り「裸一貫」で起業し、事業を継続してきた経営者のここまでの苦労、
孤独さや自分との闘争の歴史は、筆舌に尽くしがたいですが、
ご一緒していると、その経営哲学と道のりを垣間見ることができます。
繊細な心配りと信じる強さ。うまくは表現できませんが、それを感じるのです。

経営陣のスタッフひとりひとりへの心配りは、強いパーソナリティを築きます。
それは上辺だけの優しさではなく、本気に殴りあえる愛情です。
表面だけの人本経営を掲げる企業が多い中で、ときとして体罰をも否定しない情の深さは、
本当の意味でスタッフを守り、ひとりひとりを鍛え上げます。
まさに「獅子の子落とし」。
優しさや愛情を勘違いしないことで「強い個」が形成されていきます。

そして強いパーソナリティの人物は必ず信じる強さを持っています。
何事に対しても限界を設けず、自分の力、その力の成長を信じることで、
すべてを可能にしてきています。
できない無数の理由を排除し、できる数少ない理由を見つけてそこに進むことは、
自分を信じていないとできないし、その信じる根拠は日常の鍛錬からのみ育まれます。
己を信じる者同士は、仲間を信じることができます。強い意志を共有する同志だからです。
当たり前のことですが、信頼は「乱れない組織力」の源です。

「強い個」と「乱れない組織力」という、相反するように思える二つの概念を
同時につくりあげることができることを、優れた経営者は証明しているのです。

ふと、銀行勤めのときのことを思い出しました。
担当企業が、小泉政権時代の規制緩和を追い風に成長し、新興市場に上場していきました。
創業期に若造の僕に何度も頭を下げ、数千万の融資をうけにきた経営者が、
数年後の上場パーティーの場で、僕の前を素通りしました。
感謝してほしかったわけでもありません。でも覚えてほしかったという気持ちはありました。
少なくともその企業の礎を築いたメンバーの一人ではあったわけですから。

今僕は、志の高い素晴らしいSAMURAIたちと同じ空気をすって、苦楽をともにしております。
これから先、良いことばかりではないでしょう。きれいな景色だけではないでしょう。
様々な覚悟を胸に、ベランダからダイヤモンドヘッドを眺めているうちに、
いつしか、銀行勤め時代の寂しい思い出は、ワイキキの波間に消えていました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です