第43回 サラダ記念日

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『この味がいいね』と君がいったから7月6日はサラダ記念日。
1987年に発表された俵万智さんの作品は、歌集としては異例のミリオンセラーとなり、
翌年、彼女は現代歌人協会賞を受賞しました。

軽妙な口語体で、時代に即した一コマをうたった歌集は、
古めかしく堅いものだった短歌を身近なものにかえたと評価されたようですが、
時代の雰囲気や気分、生活感覚に根差したようなものでした。

ふりかえるとこの1987年という時代は、のちにバブル景気といわれる時代で、
村上春樹氏の「ノルウェイの森」も同年に刊行されており、
日本語と戦後日本社会の変容が色濃く表れている時期とも言えます。

安田生命がゴッホの「ひまわり」を53億円で購入したのも
銀座で1坪1億円を突破したのも
日本の外貨準備高が世界一になったのも
この年でした。
ちょうど、国鉄が分割民営化され、JRグループ7社が発足したのもこの年です。
戦後から上りつめた経済的な頂点と価値観の変容のミックスした時代と言えるでしょう。
中学生だった僕は、社会人としてこの時代を歩んだわけではありませんが、
テレビCMやドレンディードラマを通じて景気の良さを間接的に実感していました。
質実剛健を地でいく我が家はそうではなかったのですが、
友人たちの家では、クルマを外車に買い替え、高級店で外食をし、別荘を購入し、
どことなく浮かれた時代だったのを記憶しています。

告白すると、先日アメリカから帰国して以来、なんとなく無気力で、
仕事はするものの熱は入らず、
ギラギラしようと昔を思い出しても、燃えられないような状態が続いています。
日頃は、ビジネスの根源は好奇心だと、周囲に言っており、
好奇心ないところに情熱も利益もないと、偉そうに発信し伝えていますが、
どういうわけか、何事にも好奇心がわかず、身が入らないのです。

圧倒されてしまったのでしょうか。
最低1ac(1,200坪)購入しなければ家を建てられない住宅地に。
6’4”、230lbの体躯で、40ydを4.53秒で走りぬけるアスリートに。
リーバイススタジアムやAT&Tパークのスケールの大きさに。
摩天楼のバーで明日を語るビジネスマンたちに。
衝撃の反動のようなものからか、モチベートできない自分がいるのです。

それでも、大きなモチベーションはないのですが、続けていることがあります。
たった一つのことですが、サラダとコールドプレスジュース。
時間の許す限り歩いたニューヨークで、ジューススタンドとサラダ屋が目につき、
5年後の日本のライフスタイルを想像しながら、何軒かハシゴしたのです。
中でも「Juice Press」のサラダとジュースは特別でした。
帰国後、意外と日本でも浸透している野菜ライフに片足をいれ、
3食のうち、少なくとも1食はサラダかコールドプレスにしているのです。
おかげで、わずか数週間でウエストはマイナス6センチ、スーツもお直しに。

わが国でも、物質的な満足を得て裕福なくらしを手に入れ、バブル崩壊を経験し、
身体が資本だということに気づき、ライフスタイルは変わっていくのでしょう。
丸の内や新橋で働くビジネスマンも居酒屋で愚痴を言う機会を半減させ、
サラダランチに足を運ぶようになるのは、そう遠くないのではないでしょうか。

「1987年の記憶をたどりながらコブサラダを口にして、
 そのようなことを考えていたから、10月15日はサラダ記念日。」

別に草食系になったわけではありません。
そして、肉も魚も大好きです。BARBACOAのランチも大歓迎です。
どなたか、喝をいれてください。

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