前号、923号での導入事例の後編である。
株式会社ATEA代表取締役大杉日香理様との対談の模様を、引き続きご高覧ください。
https://atea.jp/about/
●その表現は世界観からズレていないか
川村:御社のビジネスは、個人的に「何かと何かをつなぐ」ことだと思っています。見えるものと見えないものだったり、人と人だったり、人と歴史だったり。つまり、まずは御社の世界観への理解が必要であり、そこからファンとつなぐという意味ではファンサイトとの親和性も非常に高いですよね。
大杉様:そうですね。世界観を共有する方法の一つとしてメルマガやブログを発信しています。特にブログはメルマガよりも一段深いコンテンツとして充実させているのですが、反響も大きくてとてもうれしいですね。
川村:ブログを継続して発信することはとても大切です。ブログ(例えばこのファンサイト通信を20年続けている経験からみても)の一番のメリットは、ATEAという存在がどういうふうに変化していっているかということを、読者が日々定点観測的に追えるところなんですよね。
大杉様:企業としてだけでなく、人間的な部分を感じられるコンテンツになっているのも、ヒットしている理由だと感じています。
川村:現在、御社では「一般向け」「ビジネス向け」のほかに、「政治家向け」「エグゼクティブ向け」など、ユーザーによってサイトの入り口を分けるといった、ファンの階層化をスタートしています。階層化は上手に運営していくことで、個別に手厚くケアできる側面もあると思うので、現在の御社にとっては正しい方法だと思います。
大杉様:ありがとうございます。正直、階層化を進めるにあたって悩まないかといえば嘘になります。ですが、やはり弊社のコンテンツが世界観の共有からスタートすることを考えると、リピーターのお客様なのか、それとも初見の方なのか、それによってどうしても理解度の差が激しく発生してしまいます。
川村:それにプラスして、ユーザーによって求めるものがまったく違うということもありますよね。
大杉様:そうなんです。これまでは不特定多数の方向けに、内容の濃度が違う講座を準備させていただいていたのですが、初見の方とリピーターが同じ説明を受けるといった弊害が生まれるので、それを解消するために階層を設けたという経緯があります。
川村:そこでも言葉はとても大事になってきますよね。どんな言葉がいいのか、言葉をチューニングしていくためにも客観的な目線を持つ外部のブレーンと定期的な議論が必要ではないかと感じます。
大杉様:自社だけだと表現についても独りよがりになりやすいのはたしかです。現在、月1回のミーティングで忌憚のないご意見をいただけることで、いつでも基本に戻れるという安心感をいただけていることには本当に感謝しています。
川村:サイトは一度できあがってしまうと、今度はサイトを活用して「売る」ことにばかり目線がいきがちです。そうすると、自社のサービスの本質を伝えるという役割が少しおろそかになる時があるんですよね。
大杉様:そうなんですよ。サイトという装置が完成したら、次はサービスを商品として魅力的に見せていくことにどうしても注力してしまいます。それが悪いということではないのですが、マーケティングとセールスを混同しないようにする努力は常にしています。
川村:やはり、初心に帰るという意味でも、サイトで語られているひとつひとつの言葉が「心のカタチを整える。」からブレていないかを反芻してみることは必要ですね。
●フォトストックは企業にとって武器になる
大杉様:以前に、会社として使う画像のフォトストックを作ることを勧めていただきました。それを学べたのも大きな収穫の一つです。
川村:ありがとうございます。例えば、写真の力をものすごく大事にしている企業の一つがパタゴニアです。パタゴニアの店内に入ると、写真のトーン&マナーがすべて統一されています。サーフィンのシーンだろうが、山登りのシーンだろうが、いかにもパタゴニアらしいシーンを切り取っている。企業メッセージが写真から真っ直ぐに伝わってきます。
大杉様:世界観を理解してもらうためには、大事なことですよね。
川村:本当に大切なことです。ATEAの世界観、トーン&マナーの基準を作ることが重要と思いフォトストックの作成をお勧めしました。
大杉様:統一感というものも感覚による部分が大きいので、最初は画像の取捨選択が難しかったのですが、今は徐々にですがわかるようになりました。一年半以上続けているとけっこうな量になってきています。
川村:フォトストックという方法論を最初に学んだのは、ヒューレット・パッカード社の仕事に携わった時でした。サイトの一部を担当していたのですが、使用できる画像が世界基準で決められているのです。
大杉様:つまり、フォトストックのものしか使ってはいけないルールなのですか?
川村:はい。ヒューレット・パッカード社のコミュニケーションとして表に出せる写真はすべてストックホルダーのなかに蓄積されていました。
大杉様:すごい! ある意味、会社としてのエネルギーそのものですね。
川村:ボーダフォン(現ソフトバンク)も同じ考え方でしたね。これはCI(コーポレートアイデンティティ)の考え方です。世界企業が情報を発信する時は、国によって自分たちの見え方が変わることをすごく嫌うんです。
大杉様:やはり画像は視覚情報として影響が大きいので、コンテンツの捉え方も大きく変わりますからね。
川村:画像はノンバーバル(非言語)コミュニケーションの一つであり、イメージを決定づける要因になります。そうした意味では、ATEAとして蓄積している画像も武器になります。ぜひ続けていただきたいですね。
大杉様:どのページ、どのサービスからお越しいただいても、世界観がブレない一貫性のあるサイトにするために、これからも続けていきたいと思っています。
川村:私達もこれまで以上にサポートさせていただきます。
本日はありがとうございました。
後編、終了。