ついにNetflix(ネットフリックス)に加入した。
思えば初めてNetflix製作の映画作品を観たのは2014年に作られたアルフォンソ・キュアロン監督作品『ROMA/ローマ』だった。
アカデミー賞を獲得したものの、映画館での上映がほとんどされておらず、探しに探して港北ニュータウンのイオンシネマで観たと記憶している。
映画館では上映しない映画、それが、Netflixだった。
そして今回、加入しTVモニターで、武正晴総監督作品『全裸監督』、藤井道人監督作品『新聞記者』、劇団ひとり監督作品『浅草キッド』と立て続けに観た。
最近、TVでのコンテンツ、バラエティ・ドラマ・報道番組の劣化(NHN朝ドラ『カムカムエヴリバティ』は除く)を感じてただけに、思っていた以上の出来栄えに驚いた。
Netflixは、1997年にオンラインでのDVDレンタルサービスを提供する小さな会社としてカリフォルニア州で創設された。
その後、オンラインでのDVDレンタルサービスを事業化した。
創業した当時、日本でいえばTSUTAYAのようなブロックバスターというアメリカ全土を網羅する大手チェーン店がすでに存在していた。
店舗型レンタルのビジネスモデルでは、ブロックバスターとまともに戦っても後発のNetflixに勝ち目はない。
一計を案じ、郵送によってレンタルをする業態で勝負した。
しかし、1本1本個別に課金し郵送するのでは、どうにも効率が悪い。
そこで、月額制のサブスクリプションを導入した。
月額15ドルで、DVDの本数制限なしにレンタルできるこのサービスは、延滞料金、送料・手数料が全て無料という当時としては画期的なアイデアだった。
このアイデアは創業者ヘイスティングスが、かつて自分が『アポロ13』のビデオテープをレンタルした際、返却期限に間に合わず40ドルの延滞料金を支払ったという苦い経験がきっかけとなっているという。
ところが、またしても問題が発生する。
この月額制サブスクでDVDを郵送するというスタイルにしたことで、新作の人気作品にレンタル要望が殺到し、在庫が品薄になるという事態に至った。
当然、お客様からは不満がでる。
この解消策として、Netflixはニッチなところを攻めることにした。
手元にある顧客データを分析してみると、一部の熱狂的なファンからの要望が見て取れた。
例えば、一般にはマイナーな監督の作品を全部観たい。
例えば、一般にはマイナーな役者の作品を全部観たい。
例えば、BGMになるような映像を観たい。
そして、偏愛的とも思えるファン顧客の利用度が高く、売上の比率も多いということも見えてきた。
さらに、こうしたお客様に次に観たくなりそうな作品をお勧めするリコメンド機能も用意した。
結果として「この俳優が出ている作品なら観る」「アクションものの映画が好き」「この監督の作品は外せない」といった要素をクロスさせ、戦略的に話題作を仕掛けていくことができているようになった。
こうして、いまやハリウッドと伍するコンテンツプラットフォームとなったのだ。
余談だが、昨夜観た劇団ひとり監督作品『浅草キッド』は秀作だった。
ビートたけしの自伝的小説をもとに、彼の師匠である芸人・深見千三郎との出会いと下積み時代の浅草での青春模様を、劇団ひとりが監督・脚本を手がけた作品である。
大泉洋、柳楽優弥、門脇麦、風間杜夫、鈴木保奈美ら俳優陣が素晴らしかった。
そして、劇団ひとりの監督としての力量を感じた。
このジャンル(師弟・芸人もの)は特に上手い。
2014年、劇団ひとり初めての監督作品『青天の霹靂』でも大泉洋主役の作品でしっかりと予習している。
この佳作も芸人(マジシャン)の物語である。
ここでの経験が、今作につながっていると感じた。
ちなみに、この作品の企画・プロデュースは倅の川村元気が担当している。
良い本と企画・優れた役者陣・才能ある監督と製作陣のもと、的確な分析と豊富な予算をかけて作られたものは、成功の確立が上がるという方程式を、まさしくこのNetflixが証明している。
これからも良質な映画コンテンツが作られていくだろうとの期待がますます高くなったが、ただひとつ残念なことがある。
それは、Netflixが製作した作品には劇場パンフレットが存在しないことである。
パンフレット(映画作品を末永く楽しむことのできるツール)購入派としては、まことに残念である。
1件のフィードバック
ネットフリックスの歴史を紐解いていただき、ありがとうございます。最初から、ネットフリックスのファンマーケティングが確立していたわけではなく、新作の品薄という問題に対応していく中で、自社のサービスが磨かれていったんだと感じました。これは、あらゆる企業、あらゆるサービスに言えることかも知れませんね。トラブルが顕在化して、それと向きあい、それを超えるたびに、サービスが強化されていく。一歩一歩なんだなと、何か勝手に自分に置き換えて読ませていただきました。また、「倅が川村元気さん」という点にもすごく驚きました。私は「君の名は」の大ファンです。いつか、感動の御礼をお伝えしたいです。笑