第944号『不安時代の原理原則』

昨日3度目のワクチン接種を受けたせいか、今朝左腕に少し痛みを感じる。

週明けには、まん延防止対策をこのまま続けるのか、あるいは止めるのか?
収束の兆しがいまだ不透明なコロナの状況が続き、加えてTVやネットで、ロシア軍とウクライナ軍の戦闘映像がまるで映画のワンシーンように日々当たり前のように流れている。
さらに、ガソリンや食料品など日々の生活に関わるものの物価がどんどん上昇している。

総務省の家計調査によると、2020年の2人以上の現役世帯の貯蓄額の平均は1378万円と過去最多。
10年前と比べて1割(134万円)も増えている。
「みんな、そんなに貯金しているの?」という感じだが、中身をみると見方は変わってくる。
実態をみれば、この額に届いていない世帯が3分の2を占めており、富裕層の貯蓄額が平均値を押し上げているという図式である。
逆に、貯蓄額が100万円に満たない世帯も全体の11%にものぼる。
世帯ごとの貯蓄額を並べてちょうど真ん中の数字で、より世帯全体の実感に近いとされる「中央値」では826万円。
ただ、それでも10年前の743万円と比べて1割も増えている。

これから来るであろう危機に備えている、といったところなのだろう。
こうしてみれば、もはや状況は不景気なのだ。
そして、どんよりとした気分が僕たちの心を覆い始めている。

不景気時の原理原則で推し量るならば、”人の心理状態は不安”ということになる。
この不安を前提に考えると、人の行動には3つの原理原則がある。

不安を背景にした3つの原理原則。

・値ごろ感に敏感になる。
・固定客の定着が困難になる。
・安心感が求められる。

余談だが、原理原則の原理とは「もともと世の中にあった理(ことわり)で、それを人間が発見したもの」。
原則とは「人間がルール化したものや生み出したもの」であり、いずれにしてもあらゆる場面で通用する本質的な考え方である。

こうした不景気時の原理原則の見方を教授してくれたのは、前職が船井総合研究所で、現在経営者の顧問業を生業にしている友人、長島淳治氏からである。

実際にこの2,3年で、(リモートワークでの)働き方やメディアの利用など僕たちの生活様式は大きく変化した。
そして、買い物のあり方や行動も変わった。
その1つの事例として、デジタルサービスは拡大を続け、ネットショッピング(ECサイト)での利用も加速している。

野村総合研究所(NRI)の提唱する「4 つの消費スタイル」の分析によれば、コロナ禍を経て消費者の価値観や購入基準が、以下のように変わったという。

1.商品の機能的な優位性の重視。
2.情緒的なベネフィット(効果・便益)に価値を置く。
3.多少値段が高くても品質の良いものを買う。
4.慣れ親しんだ 商品を選択する。

さらに、EC の拡大で実店舗での扱いがない商品も手に入るようになったことにより、結果として選択肢が広がった。
こうした中で自社商品が埋もれないためには、競合商品と見比べることなく自社商品を買ってもらえる「顧客からの指名買い」が企業サイドとしては重要なアプローチになる。
有り体に言えば、なじみ客(ファン)に自社の商品やサービスから離脱離反させない施策と活動をするということである。

・ファンと熱気を共有できているか。
・ファンが欲しいものを知っているか。
・ファンをえこひいきしているか。

誰にどんな商品やサービスを提供しているのか。
あらためて、自社の立ち位置とお客様との関係を見つめ直す時が来ているのだ。

1件のフィードバック

  1. 拝見しました。コロナによる不透明感や、どこか映画のワンシーンに映ってしまうウクライナの話に始まって、気付けばファン作りの大切さに帰結しておりました。
    とても納得しました。
    筆使いが巧みだと、読者の気持ちは、
    実に自然に、作者の意のままに、導かれていくものなんですね。
    短篇小説を読了した気持ちです。
    今回もまた勉強になりました。
    ありがとうございます。

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