日本初のAndroid携帯が発売される直前の7月8日、GoogleからGoogle Chrome OSが発表されました。
相も変わらずGoogle対マイクロソフトのOS戦争勃発か、などと報道されましたが、これは昨年GoogleがChrome(クロム)という独自のブラウザを発表したときと同じでした。話を「戦争」にする方が面白おかしく書けると思い込んでいるのか、いずれも短絡的にシェア争いに言及して終わっているのが残念です。
今回は、「クラウド」をキーワードにして、GoogleのChrome関連の取り組みを見てみたいと思います。
クラウドというのはネットワーク上のサービス群ですが、これはサービスを提供するクラウド側だけで成り立つものではありません。サービスを利用する側にも何かが必要です。つまり、ユーザーが何によってクラウドを利用するのかが問題です。ブラウザはその候補のひとつですが、RIA(Rich Internet Application)や携帯電話などのモバイル端末なども候補として注目されています。
なぜブラウザに変わる候補が必要なのか? 膨大なデータを背景としたクラウドに対応するには既存のブラウザでは限界があると言われています。
ウェブをはじめとするネットワークサービスは止むことなく新たな展開を追求し続けています、それに合わせてブラウザ自体やその周辺環境でもさかんに開発が行われています。しかし、ブラウザが本来的に持っている設計上の制約などから、これから本格化するクラウドの世界では、既存のブラウザでは役不足になる可能性があると言うのです。
SilverlightやAdobe AIR、JavaFxなどのRIA技術が注目される理由はここにあり、GoogleがChromeというブラウザを再発明したのも同じくここにあると思われます。さらに、クラウドに対応する端末という視点で見ていくと、モバイル端末向けのAndroid OSやAndroid携帯も、同じテーマの下で語ることができそうです。
さて、このようにChromeブラウザ、Android携帯、そして同じ文脈で今回のGoogle Chrome OSを見るとどうでしょうか? これらのチャレンジがブラウザやOSのシェア争いを目的に行われているのではない、と見えてくるのではないでしょうか。
クラウドなんてまだ雲をつかむような話だと思われる方がいるかもしれませんが(^^)、先日マイクロソフトが今年11月から同社のクラウドサービスWindows Azureの提供開始を発表したことで、既存のAmazon.comのEC2/S3、GoogleのApp Engineに加えてクラウドのけん引役となるプレイヤーが出そろいました。これからクラウドの活用が本格化する中で、クラウドに対応する端末も大きな変革期を迎えるでしょう。そしてそれが、ブラウザか、RIAか、モバイル端末か、あるいは新しい何かなのかは、まだいくつもの可能性を秘めたまま変転していきそうです。