Web Squared(ウェブの2乗)その3

web 2.0 Summit

ウェブをデータから学ぶことができ、成長するにつれて賢くなるものとして見てきました。ウェブの成長とは、蓄えられるデータ量が巨大化することを指すのではなく、賢くなることなのだという視点がおもしろいところです。白書の後半では、ウェブの成長とこのリアルな世界との関係について考えていきます。

見出しにもなっていますが、リアルな世界とバーチャルとの対応関係について「情報の影(information shadows )」というおもしろい言葉が出てきます。

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こうしたことはすべてThingMのMike Kuniavskyが指摘していた事実を反映している。リアル世界のオブジェクト(モノ)はサイバースペースで「http://www.orangecone.com/archives/2009/02/smart_things_an.html[情報の影]」を持っているということだ。たとえば書籍は、AmazonやGoogle Book Search、Goodreads、Shelfari、LibraryThing、eBay、BookMooch、Twitterそして数千ものブログの中に、情報の影を持っている。
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たとえば楽曲もiTunesやAmazonなどに情報の影を持っていると言えます。Twitterで話題になっていればTwitterにも情報の影を持っていると言えるでしょう。また、人でさえも、ブログの投稿記事や公開している写真画像などの中に、情報の影を持っていると言えます。

ネットワークが発達したユビキタスな社会では、たとえばごく小さな電子チップを使ってリアルなモノとバーチャル世界とが関連付けられているとイメージされることがあります。RFIDというごく小さな電子タグとネットワークを使ってリアルとバーチャルの両世界を融合する取り組みを意味する“The Internet of things”という言葉が、情報の影に続いて登場します。

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“Internet of Things”について語る人のほとんどは、日常のあらゆるものに付与された非常に廉価なRFIDとIPアドレスの連携が、私たちを“Internet of Things”な世界へ連れて行くのだろうと想定している。そうした想定は、“Internet of Things”が機能するためには、あらゆるものがユニークな識別子を持たなければならないということを指している。
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つまり“Internet of Things”とは、電子タグによってあらゆるモノに電子的な識別子が割り当てられているというアイデアです。白書ではしかし、実際的にはRFIDのような物理的なタグなしに“Internet of things”は成立するのだと主張します。その背景にあるのは、センサーをベースとしたデータと、データから学んで成長するウェブの存在です。

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Web 2.0の感覚が示しているのは、私たちが“Internet of Things”を手に入れるのは、センサーからのごちゃ混ぜのデータを通してなのだということだ。センサーからのデータは、機械学習アプリケーションに貢献し、それをボトムアップする。機械学習アプリケーションは、ゆっくりとだが、扱えるデータをどんどん理解できるようになる。スーパーマーケットの棚にある1本のワイン(または何か他のものでもよいが)には、“Internet of Things”に参加するためにRFIDを必要としない。必要なのはあなたが写したそのラベルの画像1枚だけだ。携帯電話、画像認識、検索があれば、知覚するウェブ(センシェントなウェブ、sentient web)が残りの仕事をやってくれる。スーパーマーケットの商品すべてが機械で読み取れるユニークなIDを持つようになるまで、私たちは待つ必要なないのだ。それよりも、バーコード、写真に付けられたタグやその他の“ハック”というリアリティからアイデンティティを強引に取り出すシンプルな方法を使って、同じことをやり遂げられるのだ。
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たいていの人は、おもしろいウェブのリンクにコメントを付けて友だちに送ったことがあるでしょう。ウェブ上では情報は、転送されたり、コメントされたり、ブログの記事に書かれたりなどしてぐるぐるとフィードバックの輪を描きます。たとえば、何の気なしにしたクリックという行為でさえ、リンクに対するユーザーのフィードバックのひとつであると言えます。情報の影はそうしたフィードバックの連鎖の中で濃さを増していきます。

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情報の影がますます濃くなり、より充実するにつれて、明示的なメタデータへのニーズは低くなっていく。カメラやマイクがウェブの目や耳となり、モーション・センサーや近接センサーはウェブの固有受容感覚に、GPSはその位置感覚になる。まさに、赤ちゃんが成長してくかのようだ。私たちが遭遇しているのはインターネットであり、インターネットは私たち自身なのだ。
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末尾の一文ではインターネットと人間が急接近したようで驚かれたかもしれませんが、ウェブは単独で成長するわけではありません。赤ちゃんに親がいるように、ウェブは人間の行動や態度とつながっています。これまで述べてきたセンサーが提供する多様な情報も、人間なくしては成り立ちません。人間がセンサーを介してウェブに指示や情報を与えている、と言うこともできるでしょう。

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センサーやモニタリングのプログラムは単独では作用しない、人間というパートナーと協調して動作するものなのだ。私たちは写真プログラムに私たちにとって重要な顔というものを認識できるよう教えたり、また私たちに関心のあるニュースを共有したり、自分のツイート(Twitterでのつぶやき)をタグ付けしたりすることで、ずっと簡単にグループ分けできるようにしている。私たち自身に価値を付加することで、同時に私たちはソーシャル・ウェブに価値を加えている。デバイス(機器)が私たちを拡張し、私たちはそれらデバイスを拡張するのである。
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逆説的に聞こえるかもしれませんが、さまざまなデータを通してウェブが私たちのリアルな世界と協調する一方で、私たちの側からも世界と強調するという視点が価値を持つのではないか。今回見てきた節の後半では、Instrumenting the world のようなフレーズで相互の協調について語られています。

身近な話としてニュージーランドのタクシー運転手の例では、お客を拾った時の情報(GPS、天気、乗客その他3つの項目)をコンピュータに入れて解析し、収入を最大化するにはどの地点でお客を待つべきかをはじき出した話が紹介されています。もちろんそのタクシー運転手は、他の運転手よりもずっと少ない仕事量でとても良い収入を得ているのだそうです。節の終わりにはこんなアドバイスがあります。

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データ解析とその視覚化(ヴィジュアライズ)そしてデータの中にパターンを見出すテクニックは、今後ますます価値のあるスキルセットになっていくだろう。
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今回は“Web Meets World: The “Information Shadow” and the Internet of Things”の節を紹介しました。今回で白書を最後まで紹介したかったのですが、最後の2節が残ってしまいました。次回で締めくくりたいと思います。

白書の原典は下記から参照できます。PDF版のダウンロードもあります。
Web Squared: Web 2.0 Five Years On
Download the Web Squared White Paper(PDF, 1.3MB)