第201号『ノンジャンルベスト3』

【CDと文庫本】
【CDと文庫本】

気がつくと数ヶ月も本も読んでいない、映画も観ていない、CDも買っていない。
そんな時期があった。

猛烈に忙しかったのか?
いや、いまの方がむしろ忙しい。
流されるままに時を過ごしていたのだろうか、それとも立ち止まり、自分の目線を確認することもままならないほどに、気持ちばかりが焦っていたのだろうか。

ここ数年、毎月「ノンジャンルベスト3」というタイトルで映画、音楽、小説、評論、演劇、居酒屋(^^!ともかくどんなものであれ、その月に体験したものの中からベストの3つを選んでいる。

たわいもないお遊びである。
しかし、このおかげで以前に比べ映画も、音楽も、本も、飽きることなく、よく触れることができている。
さて、今月のベスト3である。

第3位
キーン 「ホープス・アンド・フィアーズ」

オアシスやコールドプレイに繋がるメロデーを武器にして登場したUKバンドである。
いまや、オルタネイティブの意味が拡大解釈され、ヒップホップやR&Dなどダンスミュージックが主流となって久しい中、ボーカル、ピアノ、ドラムだけの編成グループである。
そして、その音がとてつもなく美しい。

第2位
喜多一郎監督作品「ライフ オン ザ ロングボード」2006年 邦画

早期定年退職を迎えた55歳の男の物語である。
主人公、米倉一雄はこれから何をしようかと悩んでいるとき、亡き妻との会話を思い出す。
「出会った頃のあなた、サーフィンをやっていたわね。格好良かった」と。
一雄は一人娘、優の反対を押し切って種子島へ。
そして、現地で一目を置かれるベテランサーファーの銀二に教えを請い、第2の人生をスタートさせる。

定年を迎えてから後、20年30年と生きる時代である。
死という最終章にいたるまでに、具体的な施策の無いまま、これからどんな人生を紡いでいけばよいのか?
その答えはほとんど誰も知らない。
そんなことを考えながら、自分も1度はロングボードに乗りたいと夢想しながら観ていた。
主演の大杉蓮がすばらしくいい。
愚直に何かに打ち込んでいる姿が一番かっこいい!

第1位
米原万里著 「オリガ・モリソヴナの反語法」集英社文庫
1960年代初め、プラハにあるソビエト学校で少女時代に学び、その後30数年を経て主人公が辿る奇跡のようなお話である。
1960年代の共産国家。
その舞台事態がもはや存在しない幻の世界である。
すべてにおいて想像を超えた作品である。
凄い、ということを別な言い方で表現するならば、わずかばかりの想像を遥かに超えて繰りひろげられる世界の提示のことである。
この作品こそ、まさしくその通りである。
03年 Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞作品。

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