第346号『ウォンツ主義』

【オセアニック号】
【オセアニック号】

先日取材のため、横浜大桟橋に碇泊中の世界一周大型客船、オセアニック号を見学した。
この日のイベントは、船旅を計画している人や関心を持つ人たちに、船内を公開しての説明会や申し込み受付のためのものである。

驚いたことがいくつかあった。
まず、船内にビルのおよそ10階建てに相当するエレベーターがある。
バーやレストランはもちろんのこと、プールやジャグジー、そしてエクササイズルームまで備えている。
まるで、海に浮かぶ巨大なホテルだ。
つぎに、三千人以上の見学者に驚いた。
この日の参加者は、事前申し込み制で飛び入りでは参加はできない。
それなりの目的意識と単なる興味以上のものを持った人たちがほとんど、ということである。
さらに、旅行代金が最低でも100万円以上する。
それが結構売れている。
しかも、高価格な客室のものから売れているのだ。

これは、どういうことなのか。
つまり、お客様はニーズではなくウォンツを買っているのだ。
ニーズとは現実的であり計画的であり客観的だ。
例えば、市場には800円のジーンズが出回り、そしてキングオブデニム、リーバイス501が苦戦している。
もはやデニムに対するこだわりや、ブランド訴求といったマスプロモーションだけでは売れない時代なのだ。
一方、ウォンツとは凡合理的であり突発的であり主観的である。
「近い将来、自分の姿はきっとこうなるに違いない」という仮説であり、その願望への希求である。

これは、事実ではないかもしれなが、少なくとも真実ではある。
いま、お客様が欲しいものは事実ではなく、真実の物語ではないか。
例えば「数ヶ月後、世界一周の船旅で洋上の人となっている私」。
そのストーリーに後押ししてもらい、物語の中に飛び込みたい私がいるのだ。

ファンサイトはニーズへの対応は正直苦手である。
しかし、お客様のウォンツを掴み取ることは得意である。
ニーズは大手に任せる。
ファンサイトはこれまでも、これからも、ウォンツ主義で行く。

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