第372号『映画 インビクタス 負けざる者たち』

【INVICTUNS】
【INVICTUNS】

週末、久々に映画を観た。
クリント・イーストウッド監督作品『インビクタス 負けざる者たち』。
昨年は、「グラン・トリノ」「チェンジリング」と傑作を連発し、その力量の凄みと厚みを改めて感じた。
そして、今作品でもイーストウッド監督の、新たな挑戦を楽しむことができた。

主人公は南アフリカ初の黒人大統領として1994年に就任したネルソン・マンデラ(モーガン・フリーマン)。
翌年1995年、奇しくもラグビーワールドカップが南アフリカで開催された。
これまで、黒人のスポーツはサッカー、白人のそれはラグビーである。
まさに、白人支配の象徴、それがグリーンとゴールドのユニフォーム、ラグビーチーム「スプリングボクス」だった。
だから、多くの黒人たちはこのチームが勝つことより、負けることを喜んだ。
しかし、マンデラ大統領はそのことを良しとはしなかった。
積年の恨みを黒人が白人にぶつけることで、国が二分することを恐れたからだ。
そして、このチームを見事、優勝へと導くために、様々な支援策が描かれていく。

この映画は、有り体に言えばスポーツを政治統制に利用したマキャベリズムを描いたものである。
どこか危うげで、胡散臭くなるテーマにも関わらず、むしろ清々しく感じた。

それは、大衆のうちにある永遠の欲望・野心・怨念・失望・不平に火をつけ、それを焚き付けることに成功したレニ・リーフェンシュタール監督によるヒトラーの五輪映画『オリンピア』の対局にあるからだ。
ヒトラーは誰をも信ぜず、死んでも嘘をついてやると決心し、実行した男である。

ネルソン・マンデラは、アパルトヘイト解放を叫び、27年余もの間、牢獄に幽閉されながら、これまで圧殺してきた白人社会への報復による政治を行わなかった。
それよりは、むしろ許すことで、和解することを選んだ。
なぜ、その奇跡が可能になったのか。
それは、自分を信じ、自らの魂の指導者は自らでしかないという、負けざる魂『インビクタス』を持ち続けてきたからである。
奇跡的名人芸の域に達した、クリント・イーストウッド監督ならではの天晴れな作品である。

お知らせ
3月1日、弊社で企画、運営の「andparty」が中央エフエムで取材され、オンエアーされました。
内容はここでご覧いただけます。

2件のフィードバック

  1. らーぷさんをはじめ、多くのマイスターの先生方にラジオにご出演いただいて、もっと露出度を増やしてください(笑)味ももちろん、先生方のパーソナリティに魅力がありますから!

  2. ありがとうございます。是非、次回はスタイリッシュダイニングにもご参加ください。

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