映画「フローズン・リバー」を観た。
コートニー・ハント脚本/監督の本作品は、08年のサンダンス映画祭グランプリ獲得をはじめ、09年アカデミー賞オリジナル脚本賞にもノミネートされた。
現在、アメリカのインディペンデント映画界でもっとも注目されている実力派女流監督である。
厳しい状況に置かれた2人の母親が登場する。
5歳と15歳の息子を持つ、主人公の白人女性レイ(メリッサ・レオは、この演技でアカデミー賞主演女優賞にノミネートされた)。
レイは、新しいトレーラーハウス購入のための資金をギャンブル依存症の夫に持ち逃げされたばかり。
一方、先住民保留地で暮らすモホーク族のライラは、夫を事故で失い、1歳になる息子は義理の母に連れ去られていた。
ふとしたきっかけで出会った2人は、それぞれの切羽詰まった状況を切り抜けるため、共犯関係に足を踏み入れていくことになる。
そして、取り返しのつかない事態に追い込まれた彼女たちは、・・・。
この映画には、離婚、別居、未婚、死別、家族の崩壊、孤立する個人、そして貧困といった、いま、私たちが直面している問題を静かに、しかし、目を背けることなく描いている。
かつて、共同体への依存、相互監視といった呪縛からの解放に熱狂した個人が、いまや、すべてが自分に委ねられ、個人の選択や差異の尊重ばかりがとりざたされる事態に半ば、困惑している。
そして、すべての伝統的規範が溶けたいま、個人として自分が選択するべき基準の不在に気付き、狼狽してもいる。
家族の崩壊も、孤立する個人も、貧困も、ひとり一人にとって自分に固有の問題のように扱われる。
あたかも、すべては自己責任なのだと。
しかし、いま求められているのは、一見、個人の問題に見えるものの中に、社会的な要因を見出し、個人の悩みを社会全体の課題として問い直す仕組みが必要なのではないか。
出口はなかなか見えないが、映画「フローズン・リバー」の中に、微かばかりの光明を感じることができた。
お知らせ
ファンサイトは4月9日、9回目の創立記念日を迎えます。
「恒例!ファンサイト創立記念観桜会」を開催します。
4月9日(金)場所:浜町公園(都営新宿線 浜町駅徒歩30秒)
時間:夕方より(川村は4時ころから場所を確保するため、桜の木の下で飲んでます。)
待ってます。