第381号『モーニング珈琲』

【スマート珈琲】
【スマート珈琲】

取材でも、出張でもなく、京都で遊ぶ旅をした。
初日、一番の目的だった「長谷川等伯展」を観た。
そして翌朝、迷うことなく珈琲店へ向かった。

京都の旅の楽しみの1つに、朝のモーニング珈琲は欠かせない。
「イノダコーヒ本店」、「Cafe進々堂 京大正門前」、「御多福珈琲」、「セブン」「ELEPHANT FACTORY COFFEE」挙げればきりがないほど行きたい店が思い浮かぶ。

宿から、それほど遠くない寺町三条にある「スマート珈琲店」に向かった。
市役所を右手に見て、寺町アーケードに入る。
アーケード街は8時を少し回ったばかりで、まだほとんどのお店のシャッターは降りている。
しばらくぶらぶらと歩いていくと、ほのかに珈琲豆を煎る香りが漂ってきた。

香りの誘われるままに、間口の狭い店内に入る。
すでに、8割ほど席はうまっている。
新聞を読んでいる出勤前のサラリーマン、話しに花を咲かせるご老人たち、年齢も職業もバラバラである。
妻と友人たちとで空いている席に座る。

創業昭和7年、落ち着いた内装に、低く、ゆったりとしたイスとテーブル。
さて、メニューを眺め、珈琲とそれぞれ銘々に、一品づつオーダーする。
しばらくして、運ばれてきた品々に一同、小さな歓声があがる。
みずみずしい野菜のサンドウィッチ、ふんわりとした玉子のサンドウィッチ、パンがしっとりして口溶けも滑らかだ。
甘さを押さえたフレンチトースト、そして、ホットケーキ。
このホットケーキはハッとするほどふっくらとして、ほんのりと甘みがある。
珈琲を一口、啜り、それぞれ一切れづつ頬張る。
どれもが、頃合い良く、組み合っている。

考えてみれば、アメリカでもヨーロッパでもこんなに美味い、モーニングを食べた記憶がない。
欧米の食文化を翻案し、日本風の、いや京風の珈琲文化とでも呼べるものが確かにここにはある。
珈琲を啜りながら、次の目的地を確認すべくガイドブックに目をやった。

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