第384号 『告白』

【告白のパンフレットより】
【告白のパンフレットより】

映画『告白』を観た。
エンドロールが終わり、場内が明るくなり、ほんの数秒、誰ひとり席を立つものがいない。
「うーん・・・」という低い吐息が隣の席から、漏れ聞こえた。

不景気、リストラ、いじめ、幼児虐待、こんな時代だから、せめて架空の物語では、泣けて、笑えて、愛と友情を信じることができるエンターティンメントが観たい。
だから、『世界の中心で愛を叫ぶ』も『ルーキーズ』もヒットし、そうした類いの映画が次々と量産されてきた。

映画『告白』は悪意に彩られた物語である。
灰汁のエグ味を伴ったザラリとした感触が広がる。
後味はすこぶる悪い。
でも、もう一度その味を確かめたい。
そんな印象をもった。

原作は、09年本屋大賞受賞作でベストセラーにもなった湊かなえ著「告白」。
物語は「生徒に娘を殺された」と終業式の日、教室で生徒に話す女教師の告白から始まる。
監督は『下妻物語』『嫌われ松子の一生』『パコと魔法の絵本』など、斬新で鋭利な演出力をもつ、中島哲也。
主人公、森口悠子を演じるのは、昨年『ヴィヨンの妻〜桜桃とタンポポ〜』で、最優秀女優賞を受賞した、松たか子。
他、熱血でウザい新人教師に岡田将生、殺人犯の過保護すぎる母親に木村佳乃、そしてオーディションの中から選ばれた37名の13歳の生徒たち。

演技、演出、映像、音楽、背景、どれをとっても素晴らしい出来に仕上がっている。
雨のなか、主人公、森口がひざまずき嗚咽するシーンで流れるレディオヘッドの「ラスト・フラワー」の挿入も秀逸である。
そして、最後まで途切れることのない、画面に漲る緊張感の持続に驚いた。
監督の力量の凄さなのだろう。

過去に観たなかで、1本だけ、悪意がエンターティンメントとして成立していた映画がある。
スタンリー・キューブリック監督作品『時計じかけのオレンジ』。
『時計じかけのオレンジ』の主人公、アレックスとその仲間が「雨に唄えば」を口ずさみながら、暴行をくわえるシーンと、雨のなか主人公、森口が嗚咽するシーンで流れるレディオヘッドの「ラスト・フラワー」がなぜか重なった。

これまでのところ、今年最高の作品である。

お知らせです。
アトリエから望む、スカイツリー(少し小さいですが)。
定点カメラで日々の成長がご覧いただけます。
来年の完成、そしてその後のライトアップが、いまから楽しみです。
是非、ご覧下さい。

3件のフィードバック

  1. 「告白」原作本、通勤時間に夢中になって読んでました。
    ふと見ると、前の人も「告白」を読んでいるのか
    ちらっとのぞくと同じ文体で、同じ名前が並んでました。
    とっても残酷なんだけど、遠いものではなく
    自分が悠子先生の立場だったら、そんなこと思いつかない
    だろうけど、そんな手段があることを知った今は
    自分もそうしたいと思うかもと思いました。
    映画、超~~~~~みたいですね。でもおちびが居るから
    映画館では見ることはできなさそうですが。。

  2. 水曜に新宿で観てきました。

    私は観ている間、押さえつけられているようにずーっと胸が苦しくて、
    それが異物のように詰まっていて、その塊が何かわからなくて、
    それがわかったのは見終わってからでした。
    ラストでその緊張がとかれて涙が出てくる、
    こんな気持ちになった映画ははじめてでした。

    いまの学校って、どこかこんな感じになっているのでしょうか?
    ものすごく心配です。

    しかし、この監督さんは、素晴らしいです。
    不快な中にある美しさも、飽きる隙間もない展開と映像も。
    そして、松たかこさんも木村佳乃さんも素晴らしい演技でした。
    子供達も!
    いろんな意味含めて、いい映画でした!

  3. あきりんこさん
    少し、先になりますが、レンタルDVDになりましらご高覧ください。
    お勧めです。

    豆さん
    映画の話しは、楽しいですね。
    近々、スタイリッシュダイニングで語りましょう。

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