昨年1月から12月までの間に観た映画、131作品。
外国映画、邦画、新・旧、映画館で観たものから、自宅でDVDで観たものまで含めての
数である。
毎年、恒例にしている極私的ベストテンにまとめてみた。
実は、昨年から見続けている映画シリーズがある。
「男はつらいよ」全48作である。
現在、46作目まで観た。
あと2作品で観了。
今回、このシリーズは外した。
「男はつらいよ」は、別の機会に。
では、極私的2012年ベストテンです。
1.「アルゴ」
ベン・アフレックス監督 作品、主演 製作も。
役者としても注目されたのが「グッドウェル・ハンティング/旅立ち」(97年 ガス・ヴァン
・サント監督作品)。
この作品は幼なじみ、マット・デイモンとの共同執筆でアカデミー脚本賞受賞。
本作「アルゴ」は1979年に実際に起きた事件、イランのアメリカ大使館人質事件を映画化
したものである。
久々に、映画とは手に汗握る、活劇であることを実感。
まさしくスリリングかつスピードある演出が光る。
イーストウッドの後、俳優と監督の両方で成功するのはジョージ・クルーニーかと思って
いたが、(「マイレージ・マイライフ」「ファミリー・ツリー」とも悪くはないが、い
ま一つ物足りない)意外とベン・アフレックかも、と思わせてくれるほどの力作だった。
2.「ルビースパークス」
ジョナサン・デイトン&バレリー・ファリス監督作品
「リトル・ミス・サンシャイン」の2人の監督によるラブストーリー。
スランプ中の若手天才作家と、荒唐無稽にも現実世界に出現した小説の中のヒロインとが
繰り広げる恋物語。
瑞々しい感性と、起こりえない物語の流れ、これぞまさしく映画というマジック。
この、ヒロインがなかなか良い。
演じたのは、ゾーイ・カザン、映画監督エリア・カザンの孫娘。
才能とは遺伝するものなのか、脚本も彼女の手による。
3.「ヒミズ」
園子温監督作品
園監督作品、「愛のむきだし」「冷たい熱帯魚」などどれも好きになれなかった。
過剰というか、演劇的すぎるというか、見せ物的な嘘を感じてしまうことがしばしばであった。
しかし、今回この作品はその過剰さを更に、突き抜け、何か手に触れることができるような、
暖かさを感じた。
原作は、「行け!稲中卓球部」の漫画で知られる古谷実。
主演の染谷将太と二階堂ふみは、2011年第64回ベネチア国際映画際で、
マルチェルロ・マストロヤンニ賞(新人俳優賞)をそろって受賞。
4.「おおかみこどもの雨と雪」
細田守監督作品
「時をかける少女」のドキドキするような切なさと、「サマーウォーズ」の圧倒的な躍動感
を併せ持ち、さらに、ファンタジックで、かつリアルな世界へと進化したのがこの作品である。
宮崎あおい、大沢たかおの声優陣も、脚本の奥寺佐渡子、キャラクターデザインの貞本義行も
すばらしい出来映えである。
特に、花、雪、雨の3人が深雪を掻き分け走り転げるシーンは圧巻。
なぜが、涙が止まらない。
5.「その夜の侍」
赤堀雅秋監督作品
初の監督作品、これまで劇団「THE SHAMPOO HAT」で演出・出演をしてきた。
2007年下北沢スズナリで「その夜の侍」を上演、評判となり今回映画化となった。
登場する人たちはどうしようもなく、ちっぽけでどうでもいいような存在なのに、
憎悪であれ、悲しみであれ、絶望あれ、紡いでいくと希望や愛に変わるのかもしれない。
そんな、あり得ないことが起こる予感を感じた。
主演の堺雅人はもちろん、相手役の山田孝之、そして、安藤サクラがいつもながら、
冴えのある役どころを演じている。
6.「ヘルプ」
テイト・テイラー監督作品
1960年代のミシシッピを舞台に、白人女性と黒人家政婦たちによる、街と女性の変革
の様を描いたベストセラー小説の映画化。
監督は、「ウィンターズ・ボーン」(サンダンス映画祭グランプリ作品)に俳優として
出演していた、テイト・テラー。
本作で家政婦として存在感ある演技をしていた、オクタビア・スペンサーが
第86回アカデミー賞助演女優賞を受賞している。
7.「離別」
アスガー・ファルハディ監督作品
前作「彼女が消えた浜辺」09年ベルリン国際映画祭銀熊賞(監督賞)に続く、
イランの新鋭監督作品である。
イランといえば、カンヌ国際映画祭で今村昌平監督作品「うなぎ」でパルムドールを
分け合った、アッバス・キアロスタミが長く知られた存在であったが、
久々に新しい監督の出現である。
今作もまた、複雑に絡み合った群像劇であるが、イランであろうがその他の国であろうが、
人間のもつ根源的な感情や思いを解き明かすのは容易ではなく、且つまたその中から、
普遍的である事柄とは何かを知らされる。
本作は、2011年・第61回ベルリン国際映画祭で金熊賞。
ベルリン映画祭史上初の作品および男優、女優賞の3冠も達成した。
8.「宇宙兄弟」
森義隆監督作品
タイトルが良い。
「宇宙」(最大の空間かつテーマ)と「兄弟」(最小単位ながら、切っても切れないの人間関係)。
この組み合わせだけでも映画的だと思えてしまえる、楽しくてワクワクする映画に出会えた。
森監督の前作「ひゃくはち」は高校球児の愚直な成長物語であったが、今作もまた、
兄弟の成長物語である。
意外にも、主演小栗旬の評価が低いようにいわれているが、抑えの効いた演技が素晴らしかった。
9.「四畳半襖の裏張り しのび肌」
神代辰巳監督作品
いわずと知れた、日活ロマンポルノの傑作。
僕が入社する前年、1974年の製作。
久々に、DVDで鑑賞したが、改めてその傑出した出来に驚いた。
脚本は「祭りの準備」(75年、黒木和雄監督作品)の中島丈博。
撮影は、「キューポラのある街」(浦山桐郎監督作品)「豚と軍艦」(今村昌平監督作品)
の姫田真佐久。
人間とは、こうも生きられるのかと、性を通してみた群像劇を見事に描いた作品である。
10.「恋のロンドン狂想曲」
ウディ・アレン監督作品
食わず嫌いであったのが、山田洋次とウディ・アレン監督。
最近になり、改めて、この偉大な監督たちの存在を感じている。
ともかく、映画作りが上手い。
この、作品もあちらこちらに、何気なく映画的なスパイスが振り撒かれている。
山田洋次監督作品「男はつらいよ」ももうすぐ観終わる。
次はウディ・アレン監督作品を過去に遡って順に観たい。
お知らせを1つ。
おかげさまで、倅、川村元気の著「世界から猫が消えたら」が『2013年本屋大賞』
にノミネートされました。
これから、4月の最終発表に向け、2次審査があるとのこと、お知り合い、
ご友人に書店関係の方がいましたら、どうぞ、推薦してください。
よろしくお願いします。
関連記事です。
http://www.cinra.net/news/2013/01/21/124135.php
1件のフィードバック
昨日、ウディ・アレン関連の二本をジャック&ベティでみました。
感心するほどに気が利いた台詞、展開のおかしさと小気味よいカットの数々。
そのうまさにうなるね。実は僕もくわず嫌いだったかもしれない。
いままでも、ちょいちょいと見てきていたのに。それほど……と。
僕のかかえている状況とが、当時は合わなかったのかもしれない。
しかし、いまはとても面白い。腹をかかえて笑える。
この二、三年は旧作をさがし鑑賞している。やはり、どれもがいいというわけではないと。
でも、いまやってるアレンのドキュメンタリーはおすすめですよ。ぜひ。