先月末、昨年1月から観始めた映画『男はつらいよ』シリーズ全48作と特別篇1作を
観終わった。
ほんの些細な思いつきから観始め、後半は、これで観納めるのが寂しくて、42作目
『男はつらいよーぼくの伯父さん』あたりからは映画タイトルが始まると同時に、
涙腺が緩んだ。
なぜ、そんなことになったのか。
初詣は、葛飾柴又の「帝釈天」と決めている。
みくじを引くと「大吉」とでた。
なんだか嬉しくなり、もっと正月気分に浸りたくなった。
参道を歩きながら傍らにいた妻に、その時の気分を話すと、それなら映画を観るに
かぎるわ、と。
それも、『男はつらいよ』でしょう。
考えてみれば、この映画、これまで1、2本は観たが、ほとんど印象に残っていない。
そもそも山田洋次監督の作品全般に関して、食わず嫌いなところがあった。
なんだか、迎合的で教条的な感じがして避けていた。
そう、勝手に決め込んでいた。
翌日、近所のレンタルビデオ店へ行き、日本映画旧作コーナーで『男はつらいよ』を
借り、1作目から順に観始め、そして、最後の48作目『男はつらいよー寅次郎紅の花』
(マドンナ役は浅丘ルリ子)まで。
26年に渡る、この偉大なプログラムピクチャー(フォーマットがある程度決まっている
製作スタイルの映画)。
もちろん、寅次郎(渥美清)という希有のトリックスターの話であるが、妹さくら
(倍賞千恵子)とその家族、諏訪家を通して語られた女性の成長と日本の家族の物語
でもあった。
私的『男はつらいよ』ベストテンである。
1.15作目『男はつらいよー寅次郎相合い傘』 1975年8月
マドンナ役 浅丘ルリ子
2.17作目『男はつらいよー寅次郎夕焼け小焼け』1976年7月
マドンナ役 太地喜和子
3. 42作目『男はつらいよーぼくの伯父さん』 1989年12月
マドンナ役 後藤久美子 檀ふみ
4. 11作目『男はつらいよー寅次郎忘れな草』 1973年8月
マドンナ役 浅丘ルリ子
5. 13作目『男はつらいよー寅次郎恋やつれ』 1973年8月
マドンナ役 吉永小百合
6. 8作目『男はつらいよー寅次郎恋歌』 1971年12月
マドンナ役 池内淳子
7. 27作目『男はつらいよー浪速の恋の寅次郎』 1981年8月
マドンナ役 松坂慶子
8. 5作目『男はつらいよー望郷篇』 1981年8月
マドンナ役 長山藍子
9. 33作目『男はつらいよー夜霧にむせぶ寅次郎』 1984年8月
マドンナ役 中原理恵
10. 46作目『男はつらいよー寅次郎の縁談』 1993年12月
マドンナ役 松坂慶子
追伸
先日、山田洋次 監督50周年記念作品『東京家族』を観た。
この作品は、2012年に世界の映画監督が選ぶ優れた映画1位に選ばれた作品、
小津安二郎監督作品『東京物語』(1953年)をモチーフに製作されたものである。
ちなみに2位はスタンリー・キューブリック監督作品『2001年宇宙の旅』。
これまでの『家族』『幸福の黄色いハンカチ』『遥かなる山の呼び声』『学校』
『たそがれ清兵衛』『おとうと』など数々の名作を生み出してきた監督は、いま81歳。
日本映画を牽引する監督の最新作をリアルタイムで観ることができたことに感謝したい。
これからも、時代ととも歩む作品を創り続けて欲しいと願いつつ。