第568号『六月の燗酒』

【縄のれんをくぐれば・・・】
【縄のれんをくぐれば・・・】

ファンサイトは3月決算。
その集計結果が5月末に出る。
それに併せ、会計士から消費税・法人税などの納税額が言い渡される。
だから、6月最初の月曜日が納税締切日となる。
月曜日、定例ミーティングが終わると、あたふたと銀行へと急ぐ。

ともあれ、おかげさまで12期を潜り抜け13期目に突入した。
何度か資金繰りに窮し死に体になりかけたこともある。
そんな時も創業当時から、会計士に会社の経理のアドバイスをお願いしたことが
幸いし、なんとか切り抜けてこれた。
そして、ここまでこれたもう一つの理由。
それは、顧問役を故宇田一夫が引き受けてくれたことだ。
亡くなってから、もう3年の月日が経つ。

宇田とは、前職で何度か共にプレゼンテーションを戦った。
その洞察の深さ、切り口の鋭さ、そしてマーケティングとは何かを追求する姿勢に
畏敬の念を抱いていた。

目の前の利益を追うことは当然であるが、会社としての理念を議論する相手として
宇田以上の人はない。
無理を承知で顧問役を懇願した。
思いもよらず、快く引き受けてくれた。
以来、マーケティングの師匠として多くの学びをいただいた。
そして、酒の飲み方も。

「カワムラくん、酒は六月の燗酒がいちばんだよ」
梅雨時、湿潤な空気が発酵を促し酒を旨くするのだと。
そう言って、神楽坂にある居酒屋に連れて行かれたことがある。

少し、蒸し暑さを感じる夕暮れ時、縄のれんをくぐる。
店内は薄暗く、ヒヤリとしている。
赤々とした炭火の炉を前にし、主が座り燗の頃合いを見計らっている。
そして、出された酒を、何も言わず、静かに宇田と酌み交わした。
こうして、これが此の時期の恒例となった。

さて、今年も見えぬ姿の師匠と燗酒を酌み交わすため、縄のれんをくぐる。

お知らせです。

『花も実もない! Marketing One Hit Shot』eBook発刊にあたって

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