朝の連続ドラマ『マッサン』を何気なく見ていた。
エンドロールに脚本・羽原大介の名前を見つけた。
映画「パッチギ!」で日本アカデミー優秀脚本賞、「フラガール」では日本
アカデミー最優秀脚本賞を獲得している。
また、NHK土曜ドラマスペシャル「とんび」ではモンテカルロ・テレビ祭ゴ
ールドニンフ賞も受賞している。
いまや、日本を代表するシナリオライターである。
20年も前のことだが、羽原氏とは部門は違うが同じ会社にいた。
ボクは、広告や販促の企画・制作部門に、彼は、映画や演劇の制作部門に所属
していた。
C社は、VANジャケットが倒産した後、元宣伝部の数名によって立ち上げた会社
だった。
広告・販促・映像・演劇・音楽・グッズ製造販売など、なんでもやっていた。
三枝成彰氏も、つかこうへい氏もいた。
愉快な会社だった。
昼も夜も無く、面白いことをやろう、カッコいいものを作ろうと、みんなギラ
ギラしていた。
このC社も、バブル経済の影響をうけ倒産の憂き目にあった。
辛い時代だった。
あれから20年、羽原氏の活躍を見て、それぞれに自分の領域で頑張っている
ことを確認し、まだまだやれると自信になった。
今回の脚本を引き受けるに至った彼の想いが語られた一文を見つけた。
全文記載する。
————ここから
「青い目の日本人とウイスキーバカ」
正直に告白すると、最初は「半年間続く150本のドラマ」という長さに不安を
抱きました。
しかも内容は「外国人ヒロインもの」。
どう描けば“朝ドラ”に 相応しいタッチになるのか、悶々と資料を読み、打ち合
せを重ねたある日、ハタと我が師のことを思い出しました。
私の師匠は、劇作家「つかこうへい」です。
『国とは女のことだ。お前の美しさのことだ。
明日とは、男と女が額に汗して
夢見る熱いまなざしのことだ』
運転手兼大部屋俳優の修業時代、そんな台詞に胸を熱くした記憶が蘇り、まさ
に今回のテーマに通じるものがあると、俄然やる気が湧いてきました。
ヒロインのエリーは、はるかスコットランドで日本男児と恋に落ち、家族の大
反対を押し切って海を渡り、夫の夢を陰に日向に支えながら、懸命に“日本人”
になろうとがんばりました。
その夫マッサンこと亀山政春は、まだ世間では誰もウイスキーなど飲んだこと
のない時代に、「やがて日本にも必ずウイスキーの時代が来る」と信じ、本場
に負けない国産ウイスキーを造る夢を追い続けました。
「国際結婚」と「国産ウイスキー」、時代を間違え、少し早く生まれ過ぎてし
まった感のある二人は、共に一途で不器用。
純粋さ故に時にぶつかり合い、慰め励まし合いながら、少しずつ本物の夫婦に
なっていきます。
二人の設定はどこか「つか作品」の登場人物に通じるものがあるかもしれません。
そんな夫婦の七転八倒ぶりを、笑って泣けるエンターテイメントを目指して紡
いでいきたいと思っています。
日本人になろうとしてもなれない、青い目の“日本人”と、頑固なウイスキーバカの、
「国境を超えた壮大な愛の物語」に、どうぞご期待ください。
————ここまで。
「マッサン」を、ますます応援したくなった。