第647号『トライアスリート加藤伸一さん』

IMG_6535s【トライアスロン用バイク「隆星3号」】

次男のレース観戦がきっかけで、10年間ほどブランクのあったトライアスロンを、60歳
で再開した。
そして、全てが以前と違うと感じた。
圧倒的に参加者が増えたレースの雰囲気、自転車やウェアなどの道具、アスリートのレベ
ル、なにより自分の体力と技術の低下を。
再開してはみたものの、同時にトレーニングの辛さゆえ、止めるタイミングと理由を考え
ていた。
しかし、トライアスロン仲間、加藤伸一さんと出会ってその気分は吹き飛んだ。

トライアスロンの競技距離は、大きく分けて、オリンピック・ディスタンスとロング・デ
ィスタンスのタイプに別れる。
オリンピック・ディスタンスはスイム1,5キロ、バイク(自転車)40キロ、ラン10キロの
総距離51,5キロ。
これは、文字どおりオリンピックでの正式な競技と同じ内容だ。
一方、アイアンマンレースに代表されるロングディスタンスは、スイム3,8キロ、バイク
(自転車)180,2キロ、ラン42キロ、その総距離226,2キロにもおよぶ。
泳ぐ、自転車を漕ぐ、走るという要素は同じだが、まったく違う競技といっても過言では
ない。

彼は、昨年アイアンマン・ケアンズ(オーストラリア)とアイアンマン・ジャパン北海道
を完走した強者である。

加藤さんは、3年前まで日本を代表する大手ITメーカーで働き、海外での事業立ち上げの
部長職にいた。
重要なポストでの活躍の裏で、入社以来聴力の低下に悩まされ、32歳の時に両耳の聴力を
失ってしまう。
それでも、筆談を頼りに仕事を続けてきたがそれにも限界を感じ、52歳で早期退職。

退職後、同じ障害をもつ仲間からの情報を得て、2012年12月、内耳に電極を埋め込み、音
の電気信号を聴神経に伝える人工内耳の装用手術を受けた。
困難な手術であったが、見事成功。
現在は、スポンサーにもなっているアドバンスト・バイオニクス社の最新防水型人工内耳
に切り替え、退職前からの夢だったトライアスロンに参戦している。

さらに、昨年はアイアンマンケアンズのレ-ス終了後、シドニ-とブリズベンで、医師や
障害者ら約100名を前に自らの体験をもとに講演。
講演時間が終了しても、質問の列が続いたという。
彼曰く、これは「セミナ-」の類ではなく「どのようにしてこれから生きていくか?」とい
う真剣勝負の世界だったと。
さらに「子供が笑い、話すようになった」「ありがとう」との便りが届くことがなによりの
励みになり、これからも、こうした活動を続けたい。
それが自分の使命だと思っていると語る。

来月、3月はアイアンマンNZのレ-ス後、オ-クランドで講演。
6月にはアイアンマンフランス(ニ-ス)のレ-ス後、スイスで講演の予定だという。

加藤さんの活動や話を伺い、今更ながら、なにかを成そうとしたとき最も大事なことは、内
側の「熱」なのだと感じた。
どうやったら成功するのかというテクニックではなく、その内側の「熱量」の大小こそ、な
にかを成し遂げるための最大因子ではないか。
結果として、やりたいこと・やらなければいけないこと・やっていること、この3つが同じ方
向に向く。

加藤さんを間近に見て、改めて確認することができた。

人は、生きがいや使命感が芽生えて、幸せを感じるのだ。

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