第745号『夏の終わりに』

【元町プールにて】

夏が終わる前に泳ごうと、平日の午後4時、飲み友達の先輩U氏と待ち合わせた。
場所は、横浜元町公園プール。
ここで小1時間ほど泳いでから、飲みに行くという段取りである。

U氏は、かつて僕のクライアントであり、某リサーチ会社の役員をしていたが、数年前
に(本気で読むべき本がたくさんあり)、読書をするために早期退職をされた。
川上宗薫の艶本の良さや、大佛次郎の凄みなど、本にまつわる多くの会話で刺激をいた
だいている。

さて、JR根岸線石川町下車、妻を伴いプールへと向かう。
駅から元町商店街を抜け、ウチキパン(明治21年創業、横浜の老舗)の角を曲がる。
すると、細い坂道になり、フェンス越しに山手外国人墓地を見ながら登っていく。
ほどなく、木立に囲まれた煉瓦作りのプール入り口に到着。

入場料、1時間200円。
脱衣室のロッカーは返金式で10円。
ササッと着替え、シャワーを浴びてプールへ。
広い。
そして、数段の階段式観客席と木立に囲まれたコロシアム風の作り。
しっかりと50mあり、コースも8つ(この日、コースロープは2本張られていた)もとれる。
水深も1.2~1.4mと、まずまずの深さである。

横浜市営のプールだから、もちろん子供もいれば、カップルもいるにはいるが、平日の
昼下がりのせいか人数は少ない。
むしろ、本気で泳いでいる人のほうが多い。
屋外プールだが、水がキレイなので気持ち良く泳げる。

それにしても、なんだろうこのプールの(隠しておきたくなるほどの)居心地のよさは。

真剣に泳ぎたい人、子どもたちと遊びに興じている家族、プールサイドでは、日光浴を
しているカップルや、木陰で本を読みながらのんびりしている人。
開放感があり、それぞれに楽しんでいる。

日光浴をしながら、ほんの500Mほど泳いだだけなのに、身体が火照て心地よい疲れを感
じた。

スッとした浜からの風が気持ちいい。
そして、目をやればプールの水面すれすれにツンツンと水に触れながら飛ぶトンボが、
夏の終わりを告げていた。