第789号『心のダークサイド』

【ゲームマシーン】

人は希望や理想といった、明るいポジティブな思考に劣らず、
不安・恐怖・懐疑心など、ネガティブな情念によって思考す
ることも、ままある。

先日、満員電車に乗った時のことだ。 
川崎あたりまでは、スムーズに運行していたが、多摩川を渡
る頃から急にノロノロと徐行運転に。
お隣の蒲田駅には、いつ着くのかと思えるほどの遅延ぶり。
そうこうしている内に、停車していた電車が動きはじめ、ス
ムーズな運行にほっとし、爽快な気分になった。

ところが、爽快な気分とは裏腹にダークな妄想が脳裏を横切
った。

不謹慎な話である。
例えば、これが単なる遅延などではなく人身事故で停車した
ら・・・。
乱暴極まりない言い方だが「なんでこんな時に飛び込むんだ
よ!」。
考えてみるまでもなく、人ひとりの命が、関係していること
なのに。

普通の感覚であれば、とてつもなく悲しいことである。
しかし、死者を悼む気持ちもなく、はやくこの状態から脱す
ることばかりを考えている自分がいる。

電車であれ道路であれ、都市を形成していくということは、
通勤・物流・仕事といった、目的への流れを最適化するため
に機能している。

こうして、都市機能としてのインフラ(生活基盤)が整えば
整うほど、自分の身体が都市のルール(都市で生きていくた
めに従うべき基準)に組み込まれていく。
こうなると、もうなにも考えず、身体も心も、よりその流れ
にスムーズに順応していくことが最善の解となる。

別な言い方すれば、それを妨げるものがあれば、たとえ人が
トラブルにまきこまれ、困っていたとしても、そうした障害
(バグ)を排除し、インフラのもつ本来の機能回復につとめ
ることこそが、よき市民の姿となる。
僕も、この小市民の一人として逃れることもできず、生きて
いくのか。
なんだか、打ちひしがれた気分になった。

そして、ふと頭に浮かんだ映画がある。

今晩、少し強めの酒でも飲みながら、チャップリンの名作
『モダン・タイムス』でも観ようか。