【SAKEの会】
最寄り駅、京急富岡から細い路地裏を抜けるよう
に3分ほど進むと、レンタルのツタヤ(現在は業務
用のスーパーマーケットになっている)があり、
映画のDVDを借りるため、よく立ち寄った。
その筋向かいに、古からの地元の酒店がある。
中に入ったことはないが外から見ても店内は薄暗
く、これといった特徴のない、どこにでもあるよ
うな店構えだった。
ある日、DVD返却のためツタヤに行った。
すると、酒屋全体に足場が組まれシートがかかっ
ていた。
いよいよこの店も廃業か、と想像した。
それから、半年ほどでそのシートが取れた。
そして、まるで蚕の繭のような(シート)からで
てきたのは、新しいお店(酒屋)だった。
好奇心にかられ、店内に足を踏み入れた。
シンプルでスッキリとした内装棚に、日本酒がぎ
っしりと陳列されている。
酒のラベルを見てみると、普段、あまり見かけた
ことのないものも数多く置かれている。
小栗旬似の店主に聞いた。
店主は、笑顔を絶やさず答えてくれた。
彼は、二代目として家業を継いだが、自分なりの
特徴を出していきたと考え、自ら地方の酒造所め
ぐりをしたり、各種の試飲会で、出会った(自分
のお気に入りの)酒を置いているとのこと。
その心意気が気に入り、その場で店主が勧めてく
れた酒を購入した。
その日、購入した酒は、福井の「花垣」だった。
旨い酒だった。
これがきっかけになり、それからほぼ毎月2本、
彼が推奨する酒を自宅まで届けてもらっている。
こうして、届けてもらった日は玄関先で、祭りの
こと(彼は街の神輿のリーダーをしている)や、
その時々の季節に合う酒の薀蓄など、他愛もない
会話を交わしてきた。
一ヶ月ほど前のことだ。
いや、「別にそれほど大げさなことではなのだけ
れど」と言いながら、いつになく、深刻な顔で玄
関に立っていた。
聞けば、今年は例年に比べ商売の様子が少し違う
と言う。
それは、単に売上だけのことではなく、いつも業
務で取引のある飲食店が何か変だと・・・。
まるで、これから来るであろう大きな曳き波の予
兆のようなものを感じると言うのだ。
玄関での立ち話で解決策が見つかる手合のもので
ない。
その日の夜、店が終わってから、彼は酒を手に訪
ねて来てくれた。
そして、あれこれと遅くまで話をした。
まずは、いくつか具体的にやってみようというこ
になった。
僕からのアドバイスは3つ。
1.商圏・商品・お客をしぼる。
まずは、お客様の中から特に大切にしたい100人の
ファン名簿を作る。
2.「売る」のではなく「伝える」こと。
自分が選んだ酒のコンシュルジュに徹する。
3.リアルなイベントを定期的に開催する。
先日、第1回目の「SAKEの会」が開催された。
はたして、これからどんな物語が紡がれていくのか、
見守りたい。