第853号『本を書く-3』

【「極楽クラブ」トップページ】

本を書くためのスタートとして、どこから始める
かと考えた。
まずは、かつての記憶を辿りながら、14年前ど
んなことを考え、本を書いたいのか『企業ファン
サイト入門』を読み返してみた。

久しぶりに手に取ると、なんだか古いの友人と再
会したようで、なんとなく照れる。
「久しぶり!あのころが懐かしいね。」とでもい
った会話で、あっさりと終わるのではないかと心
配していたが思いのほか話が弾む。
「いまでも、しっかりとやっているね。」と、そ
んな感じで読めた。
書かれていることの大半、(少し古い技法だった
り用語だったりはあるが)基本的には、いまもほ
ぼ変わらない考え方・方法でファンサイトを構築
し、運用していると、確認できた。

ここで「ファン」の定義とは何かを見てみる。
本文から引用する。

”ファンサイトでは、「ファン」のことを熱を持っ
た人たち、熱気を持ったユーザーと定義していま
す。(中略)企業とお客様一人ひとりとの関係を
積み重ねることでしか発生しない熱源があります。
この熱源を持った人が「ファン」なのです。”
『企業ファンサイト入門~ファンが集まるネット
マーケティング』川村隆一著より。

さらに、ファン関連本からいくつか「ファン」と
は何か、について触れた箇所を探してみた。

”企業やブランド、商品が大切にしている価値に
グッとくる人、その価値にワクワクし喜ぶ人、そ
の価値を支持し友人に薦める人。それが「ファン」
である。”
『ファンベース~支持され、愛され、長く売れ続
けるために』佐藤尚之著より。

”強い気持ちがあれば、思っているだけでなくて、
何か行動を起こしたくなるだろう。つまり、心の
中で思っているだけはなく、何か行動をすること
を「応援」として捉えたいと思う。そして、応援
する人、応援者を「ファン」として考えていくこ
とにする。”
『応援される会社~熱いファンがつく仕組みづく
り』新井範子 山川悟共著より。

”コアなジャンルの熱狂的なファン層を捉えること
こそがゴールデンルートにつながることに気がつ
いたのだ。いま、こうした「熱狂」を突破口にし
ていこうとしている人たちがいる。”
『熱狂顧客戦略~「いいね」の先にある熱が伝わ
るマーケティング・コミュニケーション』高橋遼
著より。

”「アンバサダー」とは何か。一言で言えば、企
業のブランドを積極的に応援しクチコミをしてく
れるファンのことです。この応援団といかにコミ
ュニケーションをとり、一緒にマーケティング活
動を行っていくかが、今後の企業発展の鍵です。”
『顧客視点の企業戦略~アンバサダー・プログラ
ム的思考』藤崎実、徳力基彦共著より。

それぞれに、多少の幅はあるが、ファンに対する
定義としては同じもの(キーワードとしても熱・
支持・応援など)が通底していると感じた。

「ファン」とは誰か?
つづめて言えば、企業の作り出す商品・サービス
そしてそのブランドを、熱を持って積極的に支持
し応援し、クチコミしてくれる人たちのことであ
る。

今年に入り、ソフトバンク、楽天、DeNAと時代
を牽引していた企業が軒並み赤字転落というニュ
ースに驚いている。
なにか、地殻変動のようなものが始まったのでは
ないかと感じている。
なかでも、2月12日に発表された電通の赤字転落
は象徴的とも思えた。

振り返ってみれば僕自身、ここ数年積極的にはTV
をみていない。
CMや広告で、商品購入やサービスを開始するきっ
かけとなったこともほぼない。
この現象は、僕だけではなく、もはや消費者の日
常風景と化しているだろう。
たまたま、TVから流れてるCMをみることがある。
その多くは「俺ってカッコいいだろう」とでも言
わんばかりの商品やサービス名の連呼。
こうした、厚かましく押し付けがましい映像にう
んざりする。
いまや、こんなCM(企業の意図が透けて見える)
で購入までの動線に誘導される人がどのくらいい
るのだろう。
企業に対する好感度も、むしろネガティブな効果
を生むようにしか思えない。

僕たちの知りたいことは、費用に見合う使い勝手
や便利さはどうなのかを、わかりやすく、しかも
(企業目線のいかにも演技的な)役者やタレント
の言葉ではなく、「ファン」が個人の実感や想い
で語っているほうが説得力を持って伝わってくる
のではないか。

まさしく、企業にとって自社を応援してくれる「
ファン」と、いかにコミュニケーションをとって
いくのかが、これからの企業の成長と存続のポイ
ントである。

854号『本を書く-4』へつづく。