第879号『ファンサイト,大事な3点』

【ファンサイト実践法】

2001年にキリンシーグラム社のウィスキー「ボストンクラブ」のファンサイトを立ち上げ、5年間で17万人のファンが集まるサイト運営に関わった。
その後、ファンサイトの啓蒙活動を掲げ、2002年にファンサイト有限会社を創業した。
そして、幸運にも2006年に日刊工業新聞社から自社のバイブルとなる『企業ファンサイト入門』を上梓することができた。
気がつけば、企業のファンサイト構築と運営を生業にして19年目も後半戦に入る。

幾つもの失敗と成功を重ね、わかった事柄がある。
今回は、大事な3つの点について整理してみた。

Q1.なぜ、人はファンになるのか?
A.どんな商品やサービスにも、ある人にとっての問題解決のためにある。
その商品やサービスによって、救われたり励まされたりもする。
だから、ファンになる可能性がある。

Q2. ファンとはどんな人なのか?
A.ファンとは、商品やサービスのクオリティだけではなく、それを生み出している企業の理念(創業時の志)や使命も含めた価値を応援している人のことだ。

Q3.これまでのマス広告との違いは何か?
A.マス広告とは、学校でのクラスの仲間に例えるなら、「俺ってカッコいいだろう!」と言い放ち、勉強もスポーツもお笑いもと、万能な目立ちがりやさんタイプの子。
方や、ファンサイトは「彼ってカッコいい!」といわれる、少し地味だけれどコツコツやるタイプの子。
マス広告は、どちらかというと広くみんなに即効性のあるアピールをするが、ファンサイトは、時間もかかり、すこし鈍臭いけれど、確実に仲間との良い関係を作り成果を積み上げていく。
マス広告を否定するものではなく、それぞれ向かう方向が違うということである。

Q.失敗するファンサイトに共通する特徴とは?
A.全体を見ずに、ともかくKPI(重要業績評価指数)を求めてくる担当者とお仕事をするときは難しくなることが多い。
もちろん、一担当者として上司に具体的な成果を報告しなければならないことも重々承知している。
しかし、木を見て森を見ずではないが、そもそも顧客との新たな関係を作りたいためにファンサイトを導入するのか、それとも従来の即効性のあるものをやりたいのか、はっきりさせる必要がある。
マス広告はもちろんのこと、ターゲティング広告でも正確に数値化されているとは、言い難いのではないか。

Q.成功するファンサイトに共通する特徴とは?
A.企業とファンとの関係は、理念や企業風土といった情緒的価値、そして、そこから生まれる商品やサービスなど機能価値が様々な条件によって形作られる。
しかし、様々な条件があろうとも企業とファンとの居心地のよい関係を導き出すことが「ファンサイト」のもっとも重要なポイントである。
その最適化のポイントは、自社そして製品を愛してやまないファンでもある社員の存在である。
こうした方がご担当者になると、かなりの確率で成功する。
ファンは、企業の思い通りに動いてくれる存在ではない。
だからこそ、担当者自らが熱くならずして、顧客をファンに変えることはできないのだ。

これまで多くの企業ファンサイト構築・運用を経て、これだけは確実に言える。
成功すれば、プロジェクトは継続拡大する。
失敗すれば、仕事を失う。
成功は皆で分かち合えるが、失敗は一人で背負う。
失敗に時効(なぜ失敗したのかと反芻する)はないが、その後の糧にはなった。
だからこそ、これまでの遺産を大切に検証し、これからも企業のファンサイトを作りを続けたいと考えている。

そして遠からず、失敗と成功の事例についてもお話してみたい。

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noteに「企業ファンサイト2.0」としてこれまでの経緯や、ファンサイトを取り囲む事象を掲載中です。
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