第897号『次へのために』

【コーチと】

先月行われた陸上・大阪国際女子マラソン(31日、大阪・長居公園内周回コース)東京五輪代表の一山(いちやま)麻緒(23歳)=ワコール=が2時間21分11秒で初優勝した。
 
またこの大会では、62歳の弓削田(ゆげた)眞理子(埼玉石川眼科)が2時間52分13秒で完走し、自らが持つ60歳以上の世界記録でもある、2時間56分54秒を大幅に更新して48位に入った。
取材に応え、「きつかったけど自分のベストを更新できてよかったです」と声を弾ませていた。
驚いたことに、弓削田さんは夏のトレーニングで月に800キロ、フルマラソンも毎月実施するなど、驚異的な練習量をこなしてきた。
記録更新は努力のたまもので、これまでは20キロ辺りから落ちていたペースが落ちなくなったという。

マラソンは、努力の量がそのまま結果に現れる競技と言われる。
しかし、だからといってそれを実現することは、並大抵のことではない。
「言うは易く行うは難し」ではなく、「言うも難し行うも難し」、である。
これだけの距離を走っていると、必ず怪我や痛みを抱えているはず。
インタビューでも、疲労もたまっており、大会前の1月3日には右臀筋に痛みが出たという。
2週間は練習を控えて疲労を抜く時間にあて、針治療と温泉通いでケア。
レースではテーピングも施し、痛みなく走り抜くことができたとも。

月800キロということは、一日平均すれば27キロを30日、毎日走るということになる。
さらに、毎月1回はフルマラソン42.195キロを走っているとも話している。
それにしても、この圧倒的な数字は凄い。

弓削田さんには、足元にも及ばないが、僕も小さな野心を持っている。
それは来年、2022年ITU世界トライアスロンシリーズ横浜大会を70歳で出場するという目標だ。
(トライアスロン界のレジェンドといえば、2018年のアイアンマン世界選手権で、80歳以上のカテゴリーで優勝し、コナ最高齢完走記録を86歳で更新し世界チャンピオンとなった稲田弘さん。このお話は、また別な機会に。)

ちなみに、昨年のITU世界トライアスロンシリーズ横浜大会は(それまで、6年連続して出場していたのだが)コロナで中止。
今年は、いまのところ5月開催予定で進んでいる。
こちらは、すでにエントリーも完了している。

さて、目標を掲げてはいるが、実現するにはいくつもの難関が待ち構えている。
その1番のハードルは、スピードの衰え。
レースでは、スイム・バイク・ランと、それぞれに制限時間が設けられている。
ゆっくりと泳ぐことも、走ることも出来る。
ゆっくりと自転車を漕ぐことも問題ない。

しかし、心拍数を高く維持ながら、速く動くことが年年歳歳、難しくなっている。
僕の場合、昨年68歳ころからその傾向が顕著になってきた。
この事実と向き合いながら、どうすればいいかと思案し、コーチのアドバイスをもらいながらトレーニングに励んでいる。

方法として取り組んでいるのが、レペテーショントレーニングとインターバルトレーニング。
最大心拍数の85%を維持するようにして走るレペテーションと、ほぼ全力で追い込んで90秒間走り、次にゆっくりと90秒間走るを繰り返しながら、30分ほど続けるインターバル。
このトレーニングを可能にするためには、筋トレが必須となる。

筋トレは、上半身と下半身に分け、週2回各90分間。
腹筋は、ほぼ毎回行う。
こうして、筋トレをすることで細く強い筋肉で体幹を支える。
結果として、肉離れや捻挫などの怪我も激減した。

まずは、日々のトレーニングを続け、今年5月開催予定の大会に出場すること。
そして、続けて来年のレースに出る。
今年69歳のトレーニングとレース経験が、来年70歳のトライアスロン大会出場も可能になるだろうと考えている。

1つ1つ、いま出来ることを続け、それが出来たらもう少し頑張って、いまよりほんのわずかでも強く速く前へ身体を動かしてみる。
世間の目に決められるのではく、僕自身が思い描いている70歳台への準備はすでに始まっている。