定期的にニュースレター「ふたこぶらくだ通信」(紙媒体でピンクの用紙に印刷されている)が、送られてくる。送り主は、数年前「ファンサイト実践法」のセミナーで、受講生として参加した方からだ。現在、千葉県市川市でweb制作を生業としている「彩企画」(錦織彩代表)からのものだ。ご自分の日々の出来事や、お仕事で感じた様々な気づきなど、錦織さんのお人柄がうかがえる内容である。
思い出したことがある。十数年前、南房総に繁盛している自家製ソーセージ・ハムの店(現在、残念ながら閉じてしまった)があると聞き、伺った。評判通り、確かに美味かった。そのお店は定期的にニュースレターをお客様に向けて発行していて、ファン作りにも力を入れていた。
まるで壁新聞のようなニュースレターは、かなりの力作で店主の趣味であるサーフィン話から、本業のソーセージやハム作りの色々が書かれていた。読み物としても、楽しくレベルの高いものだった。あまりに充実したニュースレターだったので、「お忙しいなかで、よくこんな手の込んだものが作れますね」と質問した。すると、淡々とした口調でこう話してくれた。
「うちに来るお客さんは『美味しいハムとソーセージ』が欲しと思って来るんです。だから、お客さんに食べ方や保存方法など、伝えたいことや教えたいことがたくさんあるんです。だから、書くことが思いつかないとか、辛いとか、そんな気分にはなりませんよ」と言われた。
もうずいぶん前のことだが、彼のこの言葉は、今でも心に強く残っている。
時々、ニュースレターやブログ、SNSを使って、お客様に「情報発信をしたほうがいいですよ」とアドバイスすることがある。しかし多くの方が、「何を書いていいのか分かりません」「書くネタがなくて、途中で止めてしまいました」「書く時間がありません」と、書けない理由を上げ情報発信をやめてしまう。
考えてみれば、お客様に向けて「何も書けない」ということは、言い換えれば、「伝えたいことがない」ということでもある。これって、冷静に考えれば、売り手としてかなり致命的な話ではないか。そこには伝えたいという想いがないわけだから、売り手側は「とりあえず、買ってもらえばそれでいい」と、本心では思っているのと同じである。それならいっそのこと、価格を比べ購買者の意見を確認し、Amazonや量販店で買ったほうが合理的である。
文章を書いたり、イラストや写真を駆使して「情報を発信する」ということは、「お客様のためになるであれば、些細なことでも伝えたい」という精神がなければできないことだ。当たり前のことだが、規模の大小にかかわらず、「奉仕の精神があるお店」はお客様に好かれるが、「お金にならない客のために、面倒くさいことはしたくない」というお店がお客様に好かれるはずがない。
あなたは、お客様に知ってもらいたいことや、伝えたい情報を発信していますか?
「お客様に喜んでもらいたい」という想いが少しでもあれば、書くのが下手でも苦手でも、頑張って何かしらの形でメッセージを届けたくなるのではないだろうか。もし、そうでないとすれば、その姿勢は、すでにお客様に見透かされていると思ったほうがいい。
2件のフィードバック
メールマガジンをやっているものの忙しさにかまけてサボってしまうことが多々あります。まずは闇雲にあれこれあせって思案する前に、お客様に伝えたいことはなんだろうとじっくり考える時間が必要ですね。
考えるきっかけになった記事でした。
ありがとうございます。
syusyu様、ご高覧ありがとうございます。これからもよろしくお願いします。