週間エコノミスト10月10・17日合併号によれば、世界的にEVへのシフトは、加速するばかりだという。いま、日本の自動車市場では、まさに幕末の時のように黒船としてEV(電気自動車)が次々と襲来している。その第1弾が米国テスラ。そしてそれに続くのは、中国の巨人BYDだ。「ドルフィンはその価格、航続性能、安全性の全てがそろったコンパクトEVの決定版として、日本の多くの顧客に選択いただける商品に仕上がっていると確信している」。BYDオートジャパンの東福寺厚樹社長は9月20日、都内で行われたコンパクトEV「ドルフィン」の価格発表会で、強い自信を見せた。ドルフィンは今年上期の販売台数で世界10位の自動車メーカーになった中国BYDの戦略EVだ。
EVのもう一つの武器(魅力的価値)は、「SDV(ソフトウエア・デファインド・ビークル)」に象徴される「クルマのスマホ化」だ。動画や音楽、SNSやゲームが楽しめ、安全・自動運転機能まで、オンラインで更新される利便性。これが消費者に認められEVの普及が拡大している。
この製造過程で、コストや開発期間圧縮のため、部品を内製化するビジネスモデルが主流になると同時に、開発に占めるソフトウエアの比重が増えてくる。この新しい流に適応したのが、テスラとBYDを筆頭とした米中の新興勢力だ。それに対し、エンジン車時代の長大な供給網、ジャスト・イン・タイムに象徴される多くの関連会社を抱える日米欧の自動車メーカーは、EV専業のスピードやコストに追いつけず、急速に競争力を失いつつある。VWやトヨタではSDV向けソフトの開発に失敗し、本体や子会社のトップが更迭される事態にもなっている。
この記事を読んで、すぐさまT・レビットのマーケティング論が思い浮かんだ。要約して引用する。
事業衰退の原因は経営の失敗にある。主要産業といわれるものなら、一度は成長産業だったことがある。いまは成長に沸いていても、衰退の兆候が顕著に認められる産業がある。成長の真っただなかにいると思われている産業が、実は成長を止めてしまっていることもある。具体例を示そう。
鉄道会社のケース。鉄道が危機に見舞われているのは、鉄道以外の手段(自動車、トラック、航空機、さらには電話)に顧客を奪われたからではない。鉄道会社自体がそうした需要を満たすことを放棄したからなのだ。鉄道会社は自社の事業を、輸送事業ではなく、鉄道事業と考えたために、顧客をほかに追いやってしまったのである。事業の定義を誤った理由は、輸送を考えず、鉄道を目的と考えたことにある。顧客中心ではなく、製品中心に考えてしまったのだ。
「鉄道会社」を「トヨタ」に置き換えて読んでみると、更にリアリティが増すであろう。
欧州連合(EU)が、2035年までにガソリン車の新車発売全面禁止を表明していたが、今春その方向転換をし、環境に負荷のかからない合成燃料で走るエンジン車は35年以降も認めるとした。しかし、その基本方針は変わらない。つまり、日本の外貨を稼ぐ大黒柱が揺らぐ状況はこれからも続く。はたして、日本車に挽回のチャンスはあるのか。10年後の、いや5年後の日本の姿を想像するだに怖くなる。
2件のフィードバック
車の発展の世界ってすごいんですね。私など自分の命の衰退しかないんで。
すごいことになっていますね。これからどうなることやら・・・