「グィーンと水に乗って進んでいる」。はじめての気分だった。「これだな!」と、ようやく掴めたように感じた。先日、プールでの出来事だ。
水泳が上手くなりたい。この思いを抱いて、数年になる。まずは、言い訳のような前置きをお許しいただきたい。僕は、夏の短い北国で育った。だから、川や海で水遊びはしたけれど、スポーツとして学び泳ぐ機会には恵まれなかった。したがって息継ぎもできないし、クロールや背泳ぎや平泳ぎバタフライなど、きちんと教わらないまま大人になった。
ものの覚え方には2種類ある。きちんと指導してもらいながら身に付ける方法と、手前勝手に身に付ける方法。僕は後者だった。お金も時間もかけず、とりあえずそれらしく見えて結果がそれなりであれば良しとする。まるで、自分の人生の歩み方にも似ているかのような、そんなやり方で泳いできた。
これまでも、そこそこ練習し、幾多のトライアスロンレースに参加してきた。しかし、60歳半ばを過ぎたあたりから、体力的に落ちてきたことを感じた。その証拠に年々、わずかづつではあるがタイムが遅くなり、身体の疲れも取れにくくなっていた。
僕はいま、YTRI【横浜トライアスロン研究所】の練習会(スイム・バイク・ラン・ストレッチ・筋トレなど、毎週定期的にカリキュラムが組まれている)に参加し、教えを請うている。ある時、スイムの練習会でのこと。研究所の滝川コーチが言われた言葉が印象に残っている。曰く、「運動にはパワーが必要である。しかし、このパワーをずっと出し続けるのではなく、最小限のパワーを使いながらいかに効率よく最大限にパフォーマンスを維持し続けるかを習得することが理想なのだ」と。
例えば、パワー全開で腕を振り回し、25メートルを25回掻いて(ストローク)泳ぐのと、余分な力を使わず16回掻いて25メートル泳ぐのとではどちらが速いかと言えば、ほぼ同タイムか、16回掻いて泳いだほうが速いという結果になることが多い。それは何故か?。水の抵抗をなるべく受けずに泳ぐほうが、グィーンと水に乗って効率よく進むからである。この事実を、身をもって学んだ。
僕が得た学びである。
・最小限の力で、最大限の効果を出すことは可能である。
・師を持ち、教えを請うことが会得の早道である。
・幾つになっても、学ぶに遅いということはない。