第1032号『2023年度私的映画ランキングその3』

いよいよ3位からの1位までの発表である。どれも派手でスペクタクルな作品ではない。いやむしろ、半径数キロの範囲で起きた日々の出来事を描いた作品ばかりである。日常生活にこそ、とんでもない物語が潜んでいるのだ。そんなことを、あらためて感じた。

3位.『怪物』是枝裕和監督作品。5月8日、六本木TOHOにて鑑賞。

『万引き家族』でカンヌ国際映画祭パルムドールを受賞した是枝裕和監督が、映画『花束みたいな恋をした』やテレビドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』などで人気の脚本家・坂元裕二によるオリジナル脚本で描くヒューマンドラマ。音楽は、『ラストエンペラー』で日本人初のアカデミー作曲賞を受賞し、2023年3月に他界した作曲家・坂本龍一が手がけた。

「怪物」とは何か、登場人物それぞれの視線を通した「怪物」探しの果てに訪れる結末とは・・・。中心となる2人の少年を演じる黒川想矢と柊木陽太のほか、安藤サクラ、永山瑛太、黒川想矢、柊木陽太、高畑充希、角田晃広、中村獅童、田中裕子ら豪華実力派俳優陣がそろった。2023年・第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され脚本賞を受賞。また、LGBTやクィアを扱った映画を対象に贈られるクィア・パルム賞も受賞している。企画・プロデュースとして倅の川村元気も参加。

2位.『市子』戸田彬弘監督作品。12月20日、川崎TOHOにて鑑賞。

僕はこの作品で戸田彬弘監督を知った。彼は、自身の主宰する劇団チーズtheaterの旗揚げ公演として上演した舞台「川辺市子のために」を、杉咲花を主演に迎えて映画化したものである。

川辺市子(杉咲花)は3年間一緒に暮らしてきた恋人・長谷川義則(若菜達也)からプロポーズを受けるが、その翌日にこつ然と姿を消してしまう。途方に暮れる長谷川の前に、市子を捜しているという刑事・後藤が現れ、彼女について信じがたい話を告げる。ミステリー的な展開で物語は進行していく。エアポケットに落ちた人々が存在することをあらためて知ることができた。この作品の中心である杉咲花の演技を観るだけでも価値がある。ともかく秀逸なのだ。周りを囲む役者たちの力量も素晴らしい。

1位.『PERFECT DAY』ヴィム・ヴィンダース監督作品。12月27日、桜木町ブルク13にて鑑賞。

これが、2023年のNo.1。『パリ・テキサス』や『ベルリン・天使の詩』などで知られるドイツの名匠ヴィム・ヴィンダースが、役所広司を主演に迎え、東京の片隅に生きるトイレ清掃員の男の日々の小さな揺らぎを描いたドラマ。2023年・第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門で、役所が日本人俳優としては『誰も知らない』の柳楽優弥以来19年ぶり2人目となる男優賞を受賞した。

役所広司はの作品に寄せて次のように語っている。”役をつくるとき、まず脚本を読み込む。そして脚本に書かれていないそのひとの世界を想像する。こういうとき平山(この作品の主人公)ならどうするだろう。自分との共通項を探すのではなく、そのひとを注意深く観察していく。そして、現場に入るときにはそのフィクションの存在を「演じるのだ」と意識する。でも、現場やセットに入ったとき、衣装に袖を通したとき、ああ、こういう人か、とわかることも多い。”

この映画は、僕自身の写し鏡のように思えた。普段意識することもなく、自分を演じている自分とはどんな存在なのかと。

付録です。 
昨年、怪我もあってTVモニターでシリーズもののドラマを鑑賞する機会が増えた。その中で、秀作がたくさんあったが10作品ほど選んでみた。それぞれの評については、また別な機会に。

Netflixや アマゾンでのシリーズ作品10選(順不同)

・『舞妓さんちのまなかいさん』Netflix


・『クィーンズギャンビット』Netflix


・『マイディアミスター 私のおじさん』Netflix
・

『サンクチャリ 聖域』Netflix


・『ザ・グローリー ~輝かしき復讐~』Netflix


・『私の開放日誌』Netflix

・『マスクガール』Netflix

・『恋のスケッチ ~応答せよ1988~』Netflix

・『BOSCH ボッシュ』アマゾン

・『サバイバー:60日間の大統領』Netflix

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です