先日、郷里の友人がトウモロコシを送ってくれた。このトウモロコシ、とてつもなく美味い。ただ甘いだけではなく味わいに凛とした趣を感じる。その理由は、標高750メートルの高原、南八甲田沖揚平(おきあげだいら)で栽培されているからだ。この地域は、ヤマセという冷たい風が吹き、朝夕の寒暖差も激しく、それがトウモロコシの甘さや強さを生み出しているからだろう。
たくさんいただいたので、我が家だけでは食べきれない。さて、どうするかと思案していた。ちょうど週末に都内に出かける用事があり、倅にお裾分けの声をかけてみた。”食べたい”という孫娘の声が、電話越しに聴こえてきた。こうして、倅や孫娘にも久々に会えた。
その孫娘の部活がバレーボール。僕も中学高校と学生時代バレーボールをやっていた。期せずして共通の話題ができ、楽しい時間を過ごすことができた。そして、ふと遠い昔の記憶が蘇り、顧問の先生の顔が思い浮かんだ。
中学2年のとき、補欠だったがアタッカーになった。当時としては少し身長があったことと、人よりジャンプ力が勝っていたからだ。僕らの中学は、その地域ではそこそこには強いチームだったが、良くて地区大会ベスト4止まりだった。
翌年4月、顧問が変わった。そして、それまでの量だけが多い練習から、戦術に沿ってフォーメーションで動く、いわゆる試合を想定して考えて動く練習に変わった。さらに、顧問の方針で、学業成績もある一定の水準に達しなければ、レギュラーにしないということになった。こうして3年のとき、僕は補欠アタッカーからレギュラーのセッターにポジションを変えさせられた。
花形のポジション、アタッカーになれると思っていたのに、なんでこんな地味な裏方役のセッターにならなければいけないのかと、少し恨んだ。さらに、ミスに関しては徹底的に叱咤され、その度に失敗の理由を言葉で説明するように求められた。
ただ言葉にすることで、それまで抽象的にしか捉えられなかったミスを、より具体的に可視化することができるようになった。このことは、いまでも僕の思考のプロセスに組み込まれている。
ともあれ、こうして練習を重ねたことで地区予選を勝ち抜き、県大会では敗れたものの決勝戦まで勝ち残れるチームに成長した。余談だが、この数年後、後輩の主力メンバーが進んだ地元の弘前工業高校が、春の高校バレーボール全国大会を制覇した。
顧問に言われた言葉を思い出す。”カワムラ、結果というのは動くことと考えることのかけ算から出てくるんだ。行動が5で、思考が1ならば、結果は5。ところが、行動が5で思考が2なら、結果は10になる。ちょっと考えて動いただけで効果は二倍になるんだ。だから、闇雲に動くのではなく、考えて動くこと。行動に思考を掛け算することで、大きな成果を生むのだ”と。
あらためて、すごいことを教えてもらっていたんだなと。そんなことを思い出しながら週末、孫娘との時間を過ごした。