コミュニティサイトを成立させる要素とは何か。
これまでの経験則を元にいくつか列挙してみます。
・人が集まる場がある
・人と人が交流している
・参加しているメンバーがなんらかのベネフットを感じている
・帰属意識を共有している
「企業ファンサイト」も出会い系サイトやオークションサイトなどのコミュニティサイトの1つのジャンルだと考えています。
したがって、大きな違いはあるとしても、その基本にあるものは共通しています。
「企業ファンサイト」はタレントやスポーツのファンサイトの発想を積極的に取り入れながらも、独自の方法を確立することが出来るのではないか。
それは、キャラクターやスターといった磁場があり、そこに同化する一体感によってファンとしての存在を示すという縦の関係ではなく、企業や商品に対する批評眼を持ち、自立的にサイトに参加する人々という、水平の関係のようなイメージです。
企業とファンが一対一で向かい合い、関係を築き上げて行くサイト。
その結果として「企業がファンとともに成長するサイト」それが企業ウェブサイトの「ファンサイト」です。
お客様が何を求め、どんな商品やサービスを開発すればいいのか、どこをどう改善すればいいのか、その具体的な考え方や、方法を見つけ出すことのできるマーケティング的発想のサイトのことです。
かつて(リアルの)フリーマーケットに出店した経験があります。
お客様との遣り取りで、一番多く耳にした言葉は「なんに使うか分からないけど、とりあえず買う」というものでした。
お客様の声には、もはや商品に価格以外の意味や価値を見出すことを失い、その用途さえも判然としないまま、ただただ安いから買っとけ、といった風情が漂うばかりでした。
並べた品々を改めてみて見ても、それぞれの商品が持つ個性や手触りという顔立ちが、なかなか見えてきませんでした。
そして、お客様も売り手も、もはや、価格以外の価値などはないとあきらめているように思えたのです。
不意に村上龍の小説『希望の国のエクソダス』の一節を思いだしました。
「この国には何でもある。だが希望だけがない」
本当に欲しいモノが分からない。
ひと目で違いのわかるモノ、お客様の期待を裏切らないモノ、人の心を癒すモノ、グッとくるモノ。
人々はいま、ドキドキするストーリーと、それが自分にとってどんなドラマにつながっていくのかを期待し、探し求めているようにも感じました。
ここ数年、サンプリングや店頭での販売促進活動ではなかなか効果をあがらい。
あるいは、入念な消費者調査を行ない開発した商品であったが、期待していたほどには売上げが伸びない。
などなど、企業が長年に渡り蓄積してきたマーケティング成功の方法ではどうにもならない事態も起こっています。
そして、その事例に枚挙がない状況が続いています。
では、なぜこうした状況が起こるのでしょう。
答えははっきりしています。
企業とお客様との関係が大きく変化したからです。
商品やサービスはすでに飽和状態にあり、そのサイクルはますます加速しています。
さらに、低価格化戦略は結果として大企業でさえ、収益の低下がボディブローのように効きはじめ、その足腰に影響が及ぶまでになっています。
企業がもたらす価値が問われている状況で、「どこが気に入ったのか?」「どんな商品が欲しいのか?」など、こうした従来の枠組みで考えたところで、根本的な課題は解決するはずもありません。
しかも、多くの企業が商品やサービスの単なる提供者に過ぎなければ、お客様にとって企業そのものも、数ある選択肢の一つにならざるを得ません。
おそらく、お客様ひとりひとりの心のなかにある思いや欲望を掬い上げるための装置が無いのです。
次号に続く